震災ですべてを失った女性 家族を持つ幸せを求めた女性が再び被災地に戻る 「海鳴りがきこえる」公開決定

岩崎孝正監督「海鳴りがきこえる」が、2023年10月28日より劇場公開されることが決まった。

「海鳴りがきこえる」は、震災ですべてを失った元写真家の理子奈を描いた作品。愛息の大地の子育てに追われる毎日を過ごしている理子奈。東北の被災地出身の彼女には、震災で家族が離散した過去があった。そのためか、自分の理想的な家族を作ることに執着している理子奈だが、夫の知久とぶつかり、噛み合わない日々が続いている。そんな折、父親のように慕って師事していた写真家の浩志が、緊迫した情勢のベラルーシに難民取材に行くと連絡が入る。父親を失うような気持ちでいる最中、知久が浮気をしていることを知る理子奈。苦悩のなかで、本当に自分がすべきことは何かと自問しながら、やがて彼女は東北の被災地へ車を走らせていく。

監督は、初の長編劇映画となる岩崎孝正。福島県相馬市出身の岩崎は、東日本大震災以降、故郷の映像を撮り始め、2015年にはドキュメンタリー「自然と兆候/4つの詩から」を完成。以降も災害や公害についての短編作品を送り出してきた。主演、理子奈役を演じたのは、「アルプススタンドのはしの方」などの中村守里。夫・知久役は、映画やドラマに出演する内村遥が務めている。

岩崎監督らのコメントも公開された。コメントは以下の通り。

【コメント】

■中村守里
主人公理子奈も演じる私も、毎日一つ一つのシーンがいろんなこととの戦いでした。積み上げてきた現実が足元から揺らぎ出す過程を目の当たりにした時、あるはずの色彩が消え世界が灰色へと一変する。そこでの景色の日常は苦しく孤独で心のシャッターは閉じてしまいます。ただただ幸せになりたいと願っているのに。それでも癒えない傷は時間をかけて修復していってほしい。狂いながらも必死に立ち向かおうとした人間は、儚く脆く、そして最後には美しいとも感じました。

■内村遥
「浪江のおばちゃん」という名前で呼ばれていたおばちゃんの「浪江」というのが福島の土地の名前だったと知ったのは震災があってから。なんとも恥ずかしい話でありますが、結果的に私は親戚が暮らした土地を訪れることなく今日も暮らしています。一瞬のうちに故郷を離れることになった方々の苦しみは想像にも及びません。この作品では、体験したもの、体験しなかったものの超えることのできない距離感を表現できたらと思いました。ご覧いただけたら嬉しいです。

■岩崎孝正監督
東日本の大震災から 12 年が経ちました。まだ傷の癒えることがない女性を通して、震災によって引き起こされた人生の破滅と、それでも、再生の一歩を踏み出す人間を描きました。
多くの人間の人生が変わってしまいました。しかし誰にでも起こり得る事柄です。この作品では、みんなが抱えているかもしれない日常に潜む物語として、震災を扱っています。
人生の破滅と再生のドラマを、ぜひ劇場で体感していただければとおもいます。

【作品情報】
海鳴りがきこえる
2023年10月28日(土)より新宿 K’s cinema にて公開 以降全国順次
配給:ブライトホース・フィルム株式会社
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