VRゲームで「視野の欠け」に潜む目の病気に気付きを 東北大などが無料体験会

日本人の中途失明の原因第1位となっている深刻な目の疾患「緑内障」の早期発見につながるツールとして、東北大学大学院医学系研究科と仙台放送(宮城県仙台市)がゲーム感覚で視野の状態を判定できるチェックアプリを共同開発した。自覚症状がない人にも自分の目の状態を能動的かつ気軽にセルフチェックできるツールとして開発したもので、今後日本生命を加えた3者による仙台市内での無料体験会を実施する。

視野をチェックするアプリ「メテオブラスターVR」のイメージ(提供: 仙台放送)

国内で急増する緑内障

緑内障は眼圧が高まることで視神経に障害が起きて視野が狭くなり、視力が弱まる疾患。国内の有病率は40歳以上で5%、60歳以上では1割以上といわれ、日本の失明原因1位となっている。早期に発見し、適切に治療を受ければ視野と視力を保てる病気だが、症状の進行が非常にゆっくりであるため、病状が悪化するまで症状を自覚しにくいという難点がある。

さらに近年、緑内障の患者はさらに増加傾向にある。超高齢化に伴う現象でもあるが、その背景の一つとして指摘されている要因が近視の急増だ。近い距離を見続けると焦点を合わせるために目の形が変形し、その結果、視神経がダメージを受け、緑内障発症のリスクにつながるという。

スマホなどのデジタル端末が生活に浸透し、手元などの近い場所を見続ける“近業(きんぎょう)”の時間が長くなる中で近視は増加傾向にある。現在のペースで増加し続けた場合、2050年には全世界人口の約半数にあたる47億5800万人が近視になるとの推計もあり、それに伴い緑内障患者も増加する可能性があるという。

緑内障は40代から徐々に発症するが、多くの場合が定年退職後に視野の異常に気付き、その時点ですでに手遅れという人も少なくない。高齢で失明すると生活やコミュニケーションにも支障を来し、認知機能の低下につながるリスクも懸念される。しかし日本の眼底検査受診率は先進国の中で最低水準にとどまっており、気づきにくい目の疾患をいかに早期に発見するかが重要な課題となっている。

「やりたくなる」目の健康チェック

「患者が能動的に参加できる方法で気付きを与えたい」との思いから開発されたのが、視野チェックアプリ「METEOR BLASTER」(メテオ ブラスター)だ。宇宙空間を舞台としたシューティング系ゲームで、画面中央に飛んでくる隕石を破壊しながら、宇宙空間のあちこちに登場する星(=白い光)も捉える。

VRゲーム画面(提供:仙台放送)

片目ずつ交互に計5分間、視点を中心から動かないようにしながら周囲の変化を認識できるかどうかを試すことでユーザーの視野の範囲を簡易的に判定する。

視野状態の判定画面(提供:仙台放送)

開発した当初はスマホのゲームアプリだったが、新たに開発したVR版ではユーザーがコックピットに乗り込み、「360度宇宙空間」という没入感を体験できる仕組みにするなど、よりエンターテイメント性を高めた。8月5日(土)・6日(日)に仙台市内で開催される「みやぎ元気まつり」で無料体験会を実施する。

東北大、仙台放送、日本生命の3者は連携協定を組み、「今回の取組を皮切りにそれぞれの強みを活かしながらヘルスケアに関する研究を進め、眼疾患の早期発見、啓発活動等に取り組んでいく」としている。

共同開発を行った仙台放送は、東北大学の川島隆太教授が監修した脳を活性化させるミニゲーム「脳トレ」の開発を手掛けたことでも知られる。スマホアプリによるゲームの体験版は同社のホームページでも無料で公開している。

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