「共産主義者か?同性愛者か?」 新兵に教官から怒涛の質問 「インスペクション」本編映像

2023年8月4日より劇場公開される、エレガンス・ブラットン監督の長編デビュー作「インスペクション ここで生きる」から、新兵たちがブートキャンプに到着してすぐに“インスペクション=点検・検閲”されるシーンの、本編映像が公開された。

「降りろ!」「さっさと並べ!」「早く行け!」と教官たちからがなり立てられ、停車するバスの中から走って飛び出してくる青年たち。荷物を抱えた青年たちは、「シャツをズボンに入れろ」と数秒で服装をチェックされ、黄色い足形のあるエリアまで誘導される。複数の指導者を取りまとめるロウズ上官は、新兵たちに正しい足のそろえ方を指示しながら、「3カ月でおまえらを最強の兵にして戦闘に送り出す」と宣言する。新兵たちの不安そうな顔とは対照的に、その顔には微かな笑みが浮かぶ。

ゴールドのアクセサリーで装う者や、花柄のトップス、赤いパーカー、ジーンズに身を包む者、彼らはまだ制服に袖を通すことを許されていない海兵隊の卵たちだ。そんな彼らに最初に待ち受けている試練は、教官たちから徹底的に行われる“インスペクション=点検・検査”だった。彼らがブートキャンプに足を踏み入れた瞬間から、「重罪歴はあるか?最近大麻を吸ったか?テロ組織に所属していたことは?共産主義者か?同性愛者か?」と、全員が海兵隊の物差しで教官たちから詰問される。顔につばがかかるほどの大声で至近距離から問われた新兵たちは、全力で「ノー、サー!」と叫び返さなければならない。その時に教官と目を合わせることは許されず、茶化した者には腕立て伏せが命じられ、例えその場で自分の父親が教官と元同僚だったことを伝えても何の役にも立たないのだった。

ブラットン監督は、入隊前を描いた本シーンについて、「今までの軍隊ものでは描かれなかったシーンだと思います」と語っている。また、「インスペクション」のタイトルに関しては、「海兵隊という場では日々、点検・検査が行われているのでも、ちろん軍隊・上官からフレンチへの“インスペクション”ということもあるし、同時に社会の中で自分が“インスペクション”されるという意味合いも込められています」「私は、軍隊に対して否定も賛同もしていない。この映画を通して会話を生み出して欲しかったのです」とコメントしている。

「インスペクション ここで生きる」は、監督の体験に基づく実話を基にした作品。ゲイであることで母に捨てられ、16歳から10年間に渡りホームレス生活を送っていた青年・フレンチ。自らの存在意義を追い求める彼は、生きるために残された唯一の選択肢と信じて、海兵隊への入隊を志願する。だが、訓練初日から教官の過酷なしごきに遭い、さらにゲイであることが周囲に知れ渡ると激しい差別にさらされてしまう。理不尽な日々に幾度も心が折れそうになりながらも、その都度自らを奮い立たせ、暴力と憎悪に毅然と立ち向かうフレンチ。やがて彼の信念は、徐々に周囲の意識を変えていく。

主人公であるエリス・フレンチを演じるのは、俳優・歌手として活動し、2019年のトニー賞では別々のパフォーマンスで2つの部門(演劇主演男優賞/ミュージカル助演男優賞)にノミネートされるという、史上6人目の快挙を成し遂げたジェレミー・ポープ。本作では第80回ゴールデングローブ賞で主演男優賞(映画・ドラマ部門)にノミネートされるなどの評価を受けた。

【作品情報】
インスペクション ここで生きる
2023年8月4日(金)TOHOシネマズ シャンテ、新宿武蔵野館ほか全国公開
配給:ハピネットファントム・スタジオ
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