液体の餌 粘度で運搬方法使い分け トゲオオハリアリの共同研究

 液体の餌を胃にためたり、つかんだりすることができるトゲオオハリアリ(体長約1センチ)が液体の粘度で運搬方法を使い分けていることが、岡山大の藤岡春菜助教(行動生態学)らのグループの研究で明らかになった。より多くの餌を持ち帰るため、効率的に切り替えていることがうかがえるという。

 アリは、餌取りに出て巣の中に持ち帰る習性がある。日本に生息する約300種の大半は、餌を飲んで胃にためて巣で吐き出すだけだが、沖縄県に生息しているトゲオオハリアリなど一部は大あごでつかんで運べることが分かっていた。

 藤岡助教らは、餌として濃度の異なる砂糖水6種類(10~60%)を用意。それぞれ約100匹のトゲオオハリアリに運ばせた。最も粘度が低い濃度10%の場合、「つかむ」「つかむ・飲むの両方」が計21%だったが、濃度60%に上がると計65%となるなど、粘度が高いほどつかむ個体が増える傾向があった。

 濃度10%の砂糖水に添加物を入れて粘度のみ上昇させると、つかむ個体が増えたことから、甘さは運搬手段の使い分けに影響していないとみられる。

 さらに粘度が高いほど飲み込むのに時間がかかることも確認。藤岡助教は「より短時間にたくさん運べる手段を選んでいると推測される。今後は持ち帰った餌をどのように分配しているかといった調査も進めたい」としている。

 スイスの大学との国際共同研究で、成果は6月、英科学誌に掲載された。

藤岡春菜助教

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