病院経営、電気代が圧迫 機器止められず、価格転嫁も不可 済生会富山は5割増

電気代の高騰が経営を圧迫している済生会富山病院=富山市内

 電気代の高騰が富山県内の医療機関の経営を圧迫している。多くの医療機器を24時間稼働させることから節電が難しく、患者の体調を悪化させないよう空調の設定温度も安易に変えることができない。医療費は国が決めるため一般企業のように価格転嫁できず、電気代の先行きも見通せない状況で、県内の総合病院では太陽光パネルの設置や発電機の導入を検討する動きも出てきた。

 済生会富山病院(富山市)は4~6月の電気代が約1470万円で、前年同期と比べ約5割増となった。今年度は1億円を超えると見込まれ、昨年度の約7千万円を大幅に上回るとみられている。

 同病院には多くの電力を消費するMRI(磁気共鳴画像装置)とCT(コンピューター断層撮影)が各2台設置されている。こうした高度な検査機器は、本体はもちろん、情報処理のためのサーバーを冷やしておく必要もあり、電源をオフにすることはできない。

  ●暑さで空調費さらに

 夏本番を迎え、空調管理などで電気使用量がさらに高まると予想される。前田伸明経営企画室長は「患者の体調管理を考えると設定温度を安易に上げることはできない。節電は難しい」と説明する。

 一方、医療機関の収入となる診療報酬は2年に1回、厚生労働相の諮問機関で議論されるが、昨年4月の改定では光熱費高騰が想定されていなかった。電気代の負担増加分を価格転嫁することはできず、病院の利益が大幅に削られている状況だ。

  ●ガスの発電機導入、太陽光パネル検討

 こうした中、同病院では来年春からガスで稼働する発電機を導入する。病院の使用電力の一部をまかない、ガス代の増加を加味しても年間約1千万円のコスト削減が期待できるという。太陽光パネルの設置も検討している。前田室長は「患者により良い医療を提供するためにも経営状況の改善は重要。これからも努力していく」と話した。

 県立中央病院(富山市)では、昨年度の電気料が前年度に比べて約3割増しとなり、今年度もさらに増加傾向にある。

 省エネ対策として院内の照明を蛍光灯から節電効果の高いLED(発光ダイオード)への切り替えを急ぐ。空調用の冷水も機器に負荷の掛からないよう温度管理を徹底している。手術室などのデリケートな空間は湿度も一定に保つ必要があるという。

 富山市民病院は今年4~6月の電気代が前年同期と比べ約3割増の約4400万円となった。厚生連高岡病院(高岡市)でも6月の電気代が前年同月と比べて3割ほど高かった。同病院の担当者は「長期的に見ると経営への影響は大きい。省エネ対策を何かできないか検討したい」と不安を口にした。

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