<社説>台風6号猛威振るう 命を守る行動に徹しよう

 今も多くの県民が不安な時を送っているだろう。大型で非常に強い台風6号が沖縄県地方で猛威を振るっている。激しい風雨がしばらく続く恐れがある。命を守る行動に徹してほしい。 大東島地方は1日夜に暴風域を抜けたが、沖縄本島地方は2日まで全域が暴風域に巻き込まれた。宮古、八重山地方も強い風雨にさらされている。台風の速度が遅いため暴風雨が長期化した。

 大宜味村では車庫倒壊で下敷きになった90歳の男性が亡くなったほか、50人以上のけが人が出た。うるま市でも、ろうそくの火が原因とみられる民家火災で80代の女性が亡くなっている。家屋倒壊や道路決壊も起きた。被害はさらに拡大する可能性がある。

 この2日間、県民生活は大きな混乱に陥った。沖縄電力によると21万5800戸が停電した。沖縄県全世帯の34%にも上る。県内、県外を結ぶ空、海の便は全面欠航した。県内の大手スーパーは臨時休業を余儀なくされた。県民の多くが不自由な思いをしているはずだ。

 気になるのは今後の台風の進路である。台風6号は引き続き強い勢力を維持したまま東寄りに進路を変えることが予想される。沖縄県地方はしばらく台風の影響が続く。まだ気を抜くことはできない。停電が続く地域は、携帯ラジオなどを通じて情報収集に心掛けてほしい。

 本格的な復旧作業は暴風警報が解除された後になるので、しばらく停電が続く地域もある。心配なのが火災の発生だ。ろうそくなど火の元には気をつけてほしい。長雨が続くので地盤が緩む恐れがある。地滑り、土砂崩れを警戒しなければならない。樹木やブロック塀の倒壊を警戒する必要がある。不安があれば自治体が用意した避難所を活用してほしい。

 台風が去った後、具体的な被害状況の把握が急がれる。県や市町村には速やかな調査と復旧に向けた対策をお願いしたい。農作物への甚大な被害が予想される。観光業界にとっては台風がかき入れ時を直撃した形になった。コロナ禍が落ち着き、最初の夏の観光シーズンである。経済的な損失も膨らむ可能性がある。

 秋に向けて今後も台風が沖縄県地方に襲来する可能性がある。自然の猛威に対する事前の備えが欠かせない。県、市町村は非常食の備蓄量を確認してほしい。各家庭でも必要量の水や非常食などの確保が求められる。災害による停電に備え、ポータブル電源も役立つであろう。

 地球温暖化による海温上昇で台風の巨大化が指摘されている。猛烈な台風の接近に備えなければならない。行政では短期的には台風襲来時の住民の安全を確保するマニュアル作り、中長期的には減災・防災のまちづくりが求められる。各家庭でも防災を意識した生活を心がけ、台風に負けない県民生活を確立したい。

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