フマキラーの社名の由来 キラーは殺し屋、「フマ」は?

戦前の殺虫剤と現在の商品

 蚊などの虫に悩まされる夏、お世話になるのが家庭用の殺虫剤。全国的なメーカーの一つがフマキラー(広島県廿日市市)だ。社名に「キラー(殺し屋)」と穏やかでない文字が。「フマ」とは何を意味するのか。由来をひもといた。

 1874年、漢方薬などの調合、販売を手がける店として広島県祇園町(現広島市安佐南区下祇園)で創業し、後に屋号を大下回春堂とした。1920年、瀬戸内海などで栽培されていた除虫菊から有効成分を抽出し、世界初の液体殺虫剤として売り出したのが「強力フマキラー液」だった。当時はガスの圧力で薬剤を噴霧するエアゾール缶がまだなく、金属の筒から息を吹き込んでいた。

 由来は「フライ&マスキートキラー」の略という。「フライ」はハエ。蚊が「モスキート」でなく「マスキート」なのは、英語の本場の発音に近づけたためとみられる。当時は害虫による感染症が深刻で、命を守る一助になる思いが込められた。62年、社名もフマキラーに変更した。

 英語表記は「FUMA KILLA」。「KILLER」にしなかったのは「直接的な表現をマイルドにした」「日本語読みの表記に近づけたのでは」と社内でも諸説ある。真相は「やぶの中」のようだ。

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