AMGTAの最新調査が、持続可能性に対するバインダージェット式3Dプリントの利点を実証

イェール大学環境学部による調査の結果、従来の鋳造方法より温室効果ガスが大幅に削減することが判明

コネチカット州ニューヘイブン--(BUSINESS WIRE)--(ビジネスワイヤ) --持続可能な付加製造(AM)産業慣行の促進に焦点を当てる、世界的な提言団体の付加製造事業者グリーン・トレード協会(AMGTA)は、『ライフサイクルの比較評価:工業部品における鋳造とバインダージェットの比較』と題したライフサイクル分析調査の予備結果を発表しました。この調査はAMGTAの委託により、イェール大学環境学部(YSE)が大量生産向けAM技術の世界的リーダーであるデスクトップ・メタル(NYSE:DM)および気候に関する革新的なソリューションの世界的企業であるトレイン・テクノロジーズ(NYSE:TT)と共同で実施したものです。トレインのHVACシステムを利用してスチール製スクロール・チラーを分析し、バインダージェット式3Dプリントと従来の金属鋳造の製造における相対的な影響を測定しました。予備的な結果として、主に生産段階における必要エネルギー量が少ないことにより、バインダージェット処理で温室効果ガス(GHG)排出量が38%も削減されることが確認されました。

トレイン・テクノロジーズの付加製造主任技術者であるケビン・クラッグ氏は次のように述べています。「このプロジェクト以前は、ライフサイクルにおける排出量について、バインダージェットと従来の製造アプローチの比較は確定しておらず、AM技術採用の障壁となっていました。この調査の結果、トレイン・テクノロジーズはAMのコスト、生産性、環境への影響について、製品の設計サイクルの早い段階で、包括的に検討できるようになり、より有利な立場を得ることができました。早期段階では、リスクは最も低く、潜在的な利点は最も大きいのです」

この調査からは、次のような要点が得られました。

  • 温室効果ガス排出量の大幅な削減。調査対象の部品についてバインダージェットと従来の鋳造を比較した場合、付加処理では温室効果ガスの排出が38%削減されました。
  • エネルギーミックスの重要性。先述の調査結果と同様、この調査により、製造施設のエネルギー生成場所でエネルギーミックスを行うこと、およびそのエネルギー・グリッドが持続可能な手段で作られたかどうかが、温室効果ガスの排出に大きな影響を持つことがわかりました。
  • 軽量化に向けた再設計の価値はごくわずか。調査の結果、スクロール・チラーに格子型構造を使用して軽量化に向けた再設計を行った場合、温室効果ガスの排出に関しては利点が非常に小さいことがわかりました。製造される部品の全体的な寸法やプリント量の効率的な利用が、軽量化よりもはるかに重要な要素となりました。軽量化は、本調査で扱わない使用段階において環境上の利点に寄与する可能性があります。
  • 材料生産の影響。調査では、原料となる粉末の製造による環境への影響は鋳鋼の約2倍であることがわかりましたが、このような増加は温室効果ガスの排出全体のごく一部であり、調査結果全体における重要性は高くありません。
  • 全体的には、バインダージェットがより持続可能な部品を生産。バインダージェット方式で必要エネルギーから排出される温室効果ガスが、従来の製造方法に比べて大幅に削減されたことが、YSEの調査でこれまでのところ最も重要な発見となりました。

AMGTA専務理事のシェリー・モンローは以下のように述べています。「今回発表した調査結果は、AM業界にも、より持続可能な生産手段を求めているより多様な製造分野の企業にとっても重要なものです。本調査によりバインダージェットが従来の鋳造より必要エネルギーが少ないことを定量的に示すことができる一方、このユースケースについては、軽量化では大した効果が得られなかったことに驚く方もいるかと思います。」

付加製造が過去10年で2桁の年間成長率を示した要因の一つとして、コストの優位性、大量生産、持続可能性に利する可能性を理由に、バインダージェットがさまざまな業界で採用されてきたことが挙げられます。

デスクトップ・メタルの最高技術責任者ジョナ・マイヤーバーグ氏は、以下のように述べています。「独立した第三者の調査により、バインダージェットが金属部品の生産においてより環境にやさしいアプローチであることが重ねて証明されたことを喜ばしく思います。従来の金属鋳造による有害な排出物は革新的な技術的アプローチを使用して低減する必要がありますが、製造業者が金属製品の製造方法について適切な選択をするには、グリーンウォッシュではない信頼できるデータが必要です。今回のイェール大学、トレイン・テクノロジーズ、AMGTAによる最新調査は、当社のチームが実地経験に基づいて長年信じてきたことを実証してくれました。つまり、金属部品を製造するにあたり、バインダージェットはより環境に優しい方法であるということです。」

2年間にわたるYSEの調査では、トレイン・テクノロジーズがHVACシステムの1部品として製造する、固定スクロールと回転スクロールで構成されるスクロール・セットについて、開発から出荷までの製造ライフサイクルを分析しました。AMGTAは、より持続可能な生産手段として、従来の砂型鋳造に代わるバインダージェットの可能性をより深く理解するために、2021年に調査を委託しました。この調査では、従来の鋳造プロセスとその後の機械加工、メッキ加工、仕上げの各工程の評価をメキシコで行いました。同じスクロール・セット設計に、メキシコの同じ場所で3Dプリント、硬化、焼結という付加バインダージェットのプロセスを施した後、同じメッキと仕上げの工程を実施しました。

調査の結果、従来の鋳造ベースの方法と比較して、付加製造プロセスでは温室効果ガス排出量が38%削減されました。YSEの研究者は、バインダージェットの性質上、電力の大部分はプリント、硬化、焼結の各工程に関連して消費され、格子型構造の影響を受けないことを主な根拠として、格子型構造による軽量化に向けた再設計は必ずしもGHG排出量のさらなる削減につながらない可能性があると結論づけました。この分析では、スクロールセットの大きさを10%縮小することによる温室効果ガス排出量の削減量は1%と示唆されています。

ライフサイクルにおけるGHG排出量は、生産現場のエネルギーミックスの影響を大いに受けました。調査では、従来の方法で製造された部品一式と、積層造成された部品一式の両方を、同じ場所、同じエネルギーミックスで評価しました。研究者たちは、その他の潜在的な生産場所とそれに対応するエネルギーミックスも評価しました。その結果、有効な結論を得るためには、AMと従来のプロセスを比較する際に、グリッドの「クリーン度」に対する感度を考慮する必要があることがわかりました。より持続可能なエネルギー拠点での生産は、どちらの生産手法にも環境上の利点をもたらしますが、エネルギーミックスがより「グリーン」になるにつれて、手法の違いによる環境影響の差は小さくなります。同様に、生産量も付加製造による温室効果ガス排出において、特に造形量の効率的な利用が少ない場合や、少量生産を行う場合に重要な要因となります。

ケビン・クラッグ氏はさらに、次のように述べています。 「トレイン・テクノロジーズは、持続可能な世界を実現するためにできることを果敢に取り組んでいきます。たとえば、環境への影響を低減しながら製造・運用できる先進的な空調ソリューションの設計です。金属付加製造(AM)は、そのような追求において今後さらに有望なツールになるでしょう。AM技術の中でもバインダージェットは比較的高速で低コストであるため、妥当な生産量でHVAC部品を製造する場合に特に頼りになります。」

シェリー・モンローは次のように述べています。 「デスクトップ・メタルと協力して行ったこの調査は、より持続可能な製造方法を模索しているトレインのようなメーカーにとって非常に有利なものです。バインダージェットは、従来の方法に比べて明確かつ定量的な利点を持つ技術であることが立証されました。トレインによる、より持続可能な製造方法を追求するリーダーシップ、この研究への参加、プロセスとデータ共有への積極的な姿勢、そしてこの情報をより広い製造コミュニティと共有することへの関心に感謝します。」

研究の要点はAMGTAのウェブサイトでご覧いただけます。結果の全貌は査読プロセスを経て2024年初頭に発表が予定されています。AMGTAは、2023年中に別の独自調査を発表する予定です。本調査およびAMGTAが実施した他の研究についての詳細は、AMGTAのウェブサイトwww.AMGTA.orgをご覧ください。

AMGTAについて

AMGTAは、グローバル経済全体において付加製造がもたらす環境上の利点をより良く理解し促進する目的で、2019年に発足しました。AMGTAのメンバーは設計、原材料から最終製品、ユーザーに至るまで、製造の全領域を代表し、付加製造のベストプラクティスを通じて、より優れた、より持続可能な、経済的恩恵のある製品というイノベーションに注力しています。詳しくは、シェリー・モンローにお問い合わせください。または当社ウェブサイトをご覧ください。www.amgta.org.

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