IPOにとって悪夢のような相場とは?狙い目となる反転のサインに注目

6月は16社、7月は11社とIPOが続きました。IPOというのは、株式会社が新規上場することで、IPOのタイミングで新株を発行し、わたしたち投資家は公募で当選すれば上場前に公募価格で購入することができます。たいてい公募価格より、上場の初値は高い株価がつくことが多いので、IPOは非常に人気で、抽選に当たることは宝くじに当たるようなものです。また上場したあとも、ストップ高が連続するなど、数日で何倍にもなることがあり、個人投資家には非常に人気があります。

わたしもたびたび「IPO株でおすすめありますか?」と聞かれますが、残念ながらIPO株には手を出さないことにしていますので、的確なお答えを返すことができません。

その理由は、当たれば天国のIPO株ですが、当たる確率はかなり低いので、いちいち申し込むのがめんどくさいというのがひとつ。
IPO直後に購入してその後の値上がりを狙う作戦もありますが、ストップ高になった直後にストップ安に転落といったジェットコースターに乗るには、心臓が弱いというのがもうひとつの理由です。

たとえば、6月21日(水)に上場したオービーシステム(5576)は、公募価格1,710円に対して、初値は3,010円。その後翌日は4,410円まで上昇。しかし、翌日、翌々日と二日間で30%以上下落し、上場から6営業日後には2,908円と初値を下回り、その後ずるずる下げ続けています。

IPO株には、このずるずる下げ続けるパターンが非常に多いため、どうにも触手が伸びないのです。


ずるずる下げ続けたその先に大きなチャンス

IPO株は、IPOという下駄を履いてるため、それだけで株価が高くなります。その後、下駄を脱いで本来の実力値になるまで、株価は下げ続ける悪夢のような相場が続きます。

しかし、悪夢がいつまでも続くわけではありません。上場後、決算発表を重ねて実績を積み重ねていくことで、徐々に投資家から認められ、ふたたび買いが入り始めます。下げ続ける間に、売りたい人は売ってしまっているので、あとは買う人しかおらず、そのため上がり始めると、株価は上昇しやすく、まさにそのときが大化け株を狙う絶好のタイミングになります。

上場から1~2年経つと反転する銘柄が多いので、それまではじっと待つ。株価がぴょこっと動き出したらチャンス到来です。

好決算で反転のサイン!?

さて先日、決算発表を期に反転を見せた2021年のIPO銘柄があります。Web解析データをもとに改善提案を行うサービス会社、WACUL(4173)です。2021年2月に上場し、その直後に高値4,780円をつけてその後はひたすら下げ続け、去年の12月には高値からほぼ10分の1の最安値485円をつけました。

そのWACULに変化が起きています。直近の決算を確認しましょう。

画像:WACUL「2024年2月期 第1四半期決算短信〔日本基準〕(非連結)」より引用

2023年7月11日(火)に発表された2024年2月期第1四半期決算は、(1)売上高425(百万円)、(2)前年同期比+49.5%、(3)営業利益 69(百万円)、(4)前年同期比+162%と大幅の増収増益。通期の営業利益予想191(百万円)に対する進捗率は35.3%と、順調な滑り出しであることも分かります。

グロース市場に上場する企業は、成長を重視するため利益は度外視し、売上拡大に注力するため、赤字であることが多いのですが、同社は上場直後から黒字経営の優等生です。ただ、人材や設備、研究への先行投資のため利益の伸びは抑えられつつありました。今回の第1四半期決算では、利益をしっかり稼ぎ、それを第2四半期以降、先行投資の原資として投下するようです。

好調の理由は、日本中で業種を問わず、DX化が進んでいることにあります。7月3日(月)に発表された6月調査の日銀短観では、全産業でソフトウェアに対する投資額を前年比で11.1%増額する計画であることがわかりました。出遅れていた中小企業でも、人手不足による省人化を進めるためのDX化が急激に進行しています。

この決算発表をうけて、株価は翌日+20.8%のストップ高。その後、いったん25日移動平均線まで調整したものの、その後反転の兆しを見せています。

画像:TradingViewより

上場後からの週足株価チャートをみると下降トレンドから、横ばいが続き、決算を機にぴょこっと陽線が立っています。これが、上昇トレンド転換の起点になるかどうか、今後の動向が楽しみです。

※本記事は投資助言や個別の銘柄の売買を推奨するものではありません。投資にあたっての最終決定はご自身の判断でお願いします。

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