体内時計のズレから不調の原因に…「30分超の昼寝」がメタボを招く

日中に深く寝入ることは、体への負担になる側面も(写真:アフロイメージマート)

各地で猛暑日を記録するなど、連日うだるような暑さが続くなか、「エアコンの効いた部屋で過ごすうちに、ついうたた寝をしてしまい、かえって夜眠れなくなった」という声をよく聞く。

「夜、寝苦しくて何度も目が覚めてしまい、日中は頭がボーっとしてしまうことなどから『昼寝』が習慣化している人もいますが、長すぎる昼寝には注意が必要です」

そう警鐘を鳴らすのは『ぐっすり眠る習慣』(アスコム)の著者で、RESM新横浜 睡眠・呼吸メディカルケアクリニック理事長の白濱龍太郎先生。昼寝といえば、日中にウトウトして寝入ってしまうものというイメージがあるが、近年では1日のパフォーマンスを上げる手段としても注目されている。

「15~20分程度の昼寝のことを『パワーナップ(積極的な睡眠)』ともいい、頭をスッキリさせ、仕事や作業に集中できたり、疲労を回復させるなどのメリットが報告されています。しかし、効果があるのはあくまで30分未満の短い昼寝。長い時間寝てしまうと、じつは健康上のさまざまなトラブルのリスクを高めてしまうのです」(白濱先生、以下同)

今年4月には「昼寝の習慣があり、その時間の長い人は肥満のリスクが高い」という研究が発表された。米国とスペインの研究グループは、スペインなどの地中海地域に住む人約3千300人を対象に調査を行った。その結果、昼寝時間が30分超の人は、昼寝をしない人に比べて肥満度や血圧が高く、メタボリック症候群のリスクが1.4倍に上昇していた。

いっぽうで昼寝を30分未満にとどめている人は、昼寝の習慣がない人に比べて血圧が低い傾向が確認されたという。

「私も同様の調査研究をハーバード大学客員研究員として行いましたが、昼寝とメタボの詳しい因果関係については継続して研究中です。対象者の生活習慣から読み取れるのは、夜に寝るのが遅いことが、健康に悪影響をおよぼしているということ。人の体には『体内時計』が備わっていて、昼間は交感神経が優位になり、脳の活動が活発になり、体温や血圧、心拍数は最高値になります。夜間は副交感神経が優位になり、体温などはもっとも低くなります。同時に、成長ホルモンが分泌されます。このような1日の周期を『サーカディアンリズム』といいます。昼寝が長すぎると、このリズムが狂ってしまい、自律神経の乱れを引き起こしてしまうのです」

長い昼寝のツケは肥満だけではない。やはり30分以上の昼寝が心臓のトラブルが生じるリスクと関連するというデータも先日公表された。今年4月にスペインの欧州心臓病予防学会で発表された、フアン・ラモン・ヒメネス大学病院による約2万人を対象にした研究では、昼寝を30分以上する人は、昼寝の時間が30分未満の人に比べて、心房細動の発症リスクが90%高いことがわかったのだ。

「心房細動とは、心臓の心房が十分に収縮できずに小刻みに震えることによって脈が不規則になる状態を指します」

心房細動が起こると、心房内の血液がよどんで血栓ができやすくなるため、脳卒中リスクが5倍になると同研究グループは指摘している。

「毎晩、食事や睡眠を取る時間が遅く、生活スタイルが夜型になっている人や、たばこを吸う習慣がある人は、昼寝の取り方には特に気をつけたいところ。サーカディアンリズムを乱さないためにも、昼寝は『午後3時まで』『30分未満』をルールにしましょう」

昼寝を適度な長さにとどめるのと同時に、もちろん「夜しっかり寝る」ことも不可欠だ。

「いまの時季は暑くて日中は外出を控える人も多いでしょうが、夕方には買い物や散歩などに出かけて、歩くようにしましょう。家の中でもストレッチをするなどして、なるべく体を動かすことが大切です。適度な運動が、スムーズな入眠につながります」

大事なのは、規則正しくメリハリのある生活を送ること。ダラダラと昼寝をして不調をきたしてしまうことのないよう気をつけたい。

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