最新作『トランスフォーマー/ビースト覚醒』を超オタク監督と主演アンソニー・ラモスが語る! ロボットの“呼吸”表現とは?

『トランスフォーマー/ビースト覚醒』©2023 PARAMOUNT PICTURES. HASBRO, TRANSFORMERS AND ALL RELATED CHARACTERS ARE TRADEMARKS OF HASBRO.©2023 HASBRO

日本発の“変形ロボット玩具”が、アニメシリーズとなって人気を拡大。2007年にはスティーヴン・スピルバーグ製作、マイケル・ベイ監督によって実写超大作となった『トランスフォーマー』。その後、スピンオフともいえる『バンブルビー』(2019年)も含めてシリーズ6本が製作されたが、2023年、満を持しての再始動作が『トランスフォーマー/ビースト覚醒』だ。

これまで車や飛行機からロボットへとトランスフォームするキャラが大活躍してきた、このシリーズ。今回はゴリラやチーター、サイといった動物たちがトランスフォームする<ビースト>が初登場する。1990年代に人気を博したアニメシリーズ『超生命体トランスフォーマー ビーストウォーズ』の要素が、初めてこの実写シリーズに加わったのだ。

あらゆる星を食べ尽くす最大の敵<ユニクロン>に対し、オプティマスプライム、バンブルビーといったおなじみの<オートボット>、そしてビーストの種族<マクシマル>、さらに人間たちが激闘を繰り広げるこの最新作。監督やプロデューサー、キャストたちに、どんな思いで挑んだのかをインタビューした。

「トランスフォーマーの世界を知り尽くしている自負があった」

監督を務めたのは、これが長編3作目となるスティーヴン・ケイプル・Jr。前作は、やはり人気シリーズの『クリード 炎の宿敵』(2018年)。現在のハリウッドで、急速にその存在感を高めている才能と言える。今回、監督を任されたのは、「トランスフォーマー」シリーズへの並々ならぬ“愛”が要因だったという。

アニメシリーズや実写映画もすべて観て、大ファンであり、「トランスフォーマー」の世界を知り尽くしている自負がありました。ですからスタジオ側には自分なりのアイデアで積極的にプレゼンしたのです。

当初、『バンブルビー』の続編を打診されたのですが、個人的に続編には乗り気になれず、断ろうとしました。そうしたらコロナのパンデミックが始まってすべてが白紙になり、その後、まったく新しい脚本が完成し、ぜひやりたくなったのです。僕は「ビーストウォーズ」がいちばん好きだったので、最高のチャンスだと興奮しました。

「トランスフォーマー」に対する監督の“自負”は、どんな部分に表れているのか。スティーヴン・ケイプル・Jrは、過去の6作へのリスペクトを胸に刻みつつ、新たな表現に挑んだことを次のように語る。

これまでのシリーズに比べて、ひとつのキャラクターに“寄り添った”映像を心がけました。一発一発のパンチも、映画を観ている人が「うわっ!」とのけぞる臨場感を意識したわけです。『バンブルビー』のトラヴィス・ナイト監督から、感情表現のために「少しだけ目の部分を大きく変更した」と聞き、そこは僕も今回、オプティマスなどに踏襲しました。

難しかったのは、有機体の動物から無機質なロボットにトランスフォームするマクシマル。ラフカットで違和感があったので、その原因を探ったら呼吸をしていないことでした。ロボットなのでもちろん呼吸は不要なのですが、そうすると生命感が伝わらない。結果的にボディのさまざまなパーツから煙や空気が吐き出されるようにしたところ“生きている”感じになったのです。

前作『バンブルビー』のトラヴィス・ナイトの話が出たが、その前の5作を監督したのがマイケル・ベイ。今回も製作に名を連ねているベイは、どのように協力したのか。そこについてはプロデューサーのロレンツォ・ディ・ボナヴェンチュラが次のように説明する。

スティーヴン(・ケイプル・Jr)が大がかりなエフェクト、視覚効果を取り入れるのは初体験だったので、その部分でのアドバイスをマイケルにお願いしました。アクション超大作における“失敗”も彼は熟知しており、その部分もスティーヴンと密なやりとりで伝えてくれました。失敗から学ぶことも映画製作の重要なプロセスですから。

毎回、人間側の主人公の運命もドラマチックに展開する「トランスフォーマー」シリーズ。今回の主人公は、元軍人で電気系統に詳しいノア。NYのブルックリンで難病の弟を支えながら、新たな仕事が見つからず、悪友の誘いで車を盗もうとしたことで、オートボットの面々と出会う。

ノアを演じるのはミュージカル映画『イン・ザ・ハイツ』などで人気上昇中のアンソニー・ラモス。ボナヴェンチュラは彼の起用について「思わず応援したくなる“お兄ちゃん”的な雰囲気と、スクリーンでの存在感の両方を備えているから」と説明する。

「いざ演じてみたら、ミュージカルに似ていた」

「トランスフォーマー」シリーズといえば、これまでシャイア・ラブーフ、マーク・ウォールバーグといった人間側の主演俳優も、物語を特徴づけてきた。今回のアンソニー・ラモスは、アクション超大作は初めての挑戦となるが、ロボットたちの空前のバトルに巻き込まれつつ、ボナヴェンチュラの言うとおり、観る者を引き込む俳優としてのカリスマ性を発揮している。

そんなアンソニー・ラモスは、主演というプレッシャーを感じていたこと、そして意外にこれまでのキャリアが生かされたことを次のように明かす。

ヒーローものやアクション大作は未知の領域で、しかも夜間の撮影が5週間、ぶっ続けで予定されたりしていたので、まずは体力づくりから始めました。ただ実際にアクションの複雑な動きに挑戦してみると、ミュージカルでダンスナンバーを覚えるプロセスと同じだったんです。

今回は何度もテイクを繰り返すシーンもありましたが、そこもミュージカルに似ていて、踊っているうちに新たなアレンジを加えていくような感覚でこなしました。アクション撮影は自身のスタミナを維持するためにペース配分を考えるわけですが、そこでもミュージカルの舞台での経験が生きたと思っていますよ。

冒頭の舞台になるブルックリンは、アンソニー・ラモスが育った街でもある。今回の物語で戦いのきっかけを作ってしまう、もう一人の重要キャラ、博物館のインターンであるエレーナを演じるドミニク・フィッシュバックもやはりブルックリン育ち。二人は以前から親友だった。ドミニクもすんなり役に入り込めたという。

ほとんど素(す)のままでキャラクターを演じられるのは、俳優として大きなプラスでした。何より、地球の運命がブルックリンにかかっている設定自体にテンションが上がっていました(笑)。ブルックリンに住んでいる人の“地元愛”は特別なんです。

この作品は撮影中、見えない敵と戦ったりして、どんな映像になるか不安もありましたが、完成作を観たら私自身もびっくりで、ブルックリンに誇れる映画になったと感動しました。

ブルックリン以外にも、『トランスフォーマー/ビースト覚醒』には、“天空都市”と呼ばれるペルーの世界遺産、マチュピチュ遺跡や、その周辺でロケを敢行した大バトルなど、シリーズファンも目を疑うシーンが詰まっている。スティーヴン・ケイプル・Jr監督も「険しいジャングルで重い機材を移動し、マチュピチュに到達する頃には、みんなが高山病で苦しんでいました。天候も急変し、2メートル先の人すら見えない状況での撮影はとにかく過酷」と語っているように、VFXだけではない、アナログの努力が積み重なっていることを、ぜひ本作で実感してほしい。

取材・文:斉藤博昭

『トランスフォーマー/ビースト覚醒』は2023年8月4日(金)より全国公開

『バンブルビー』はCS映画専門チャンネル ムービープラスで2023年8~9月放送

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