空き家の固定資産税6倍に…税制改正で相続税も大幅増!

実家の処分は今年中に(写真:PIXTA)

“相続大増税時代”がやってくる。’23年度の税制改正大綱で、相続税・贈与税が大幅に変更され、親から相続する預金や家などにかかる税金が大幅増になるのだ。

「影響の大きいものでは、被相続人が存命のうちから財産を贈与することで、節税効果が見込める“生前贈与”の仕組みが大幅に変更されることになります。そのほかにも、空き家を放置していると、固定資産税が最大6倍になってしまう可能性などもあります」

そう話すのは、相続に詳しい税理士の西口孟志さん。

増税回避のため、おのおのの変更点と節税ポイントを確認しよう。まず、生前贈与はどう変わるのか。

「正式には“暦年贈与”と呼ばれています。たとえば、10年前から毎年、子に財産を贈与していた被相続人が亡くなった場合、現行制度では亡くなる3年前までの贈与分に相続税が課せられます。しかし、来年1月からは“7年前”まで遡って課せられることに」

実際に計算すると……。

「1億円の預貯金を’13年から毎年100万円ずつ子ども1人に贈与していた被相続人が’23年に亡くなったとします。現行制度では1億円-(100万円×10年)+300万円(3年分)=9300万円に対して相続税がかかりますが、来年からは変わります。7年間遡ることに加えて、緩和措置として相続発生から4年~7年以内に行った生前贈与については、総額で100万円までは非課税に。つまり、1億円-(100万円×10年)+600万円(7年分の700万円-緩和措置の100万円)=9600万円に相続税がかかります」

税率は相続する額により異なるが、現行では子ども1人のみで相続する場合の相続税は、[9300万円-3600万円(基礎控除)]×税率30%-700万円(控除額)=1010万円。来年からは、[9600万円-3600万円(基礎控除)]×税率30%-700万円(控除額)=1100万円。つまり90万円の負担増になる計算だ。

ただし、次のような節税ポイントがあるという。

「まず、新制度が適用されるのは、’24年以降に贈与した財産に対してなので、贈与を’23年内にできる分だけ行うことで、その分は現行制度の3年分の課税で収めることができる場合があります」

つまり、’19年から暦年贈与を始めた被相続人が’28年に亡くなった場合、生前の’27年から7年遡った’21年分からの加算でなく’24年から4年分の加算になるのだ。

「もう1つは、孫に贈与する方法。生前贈与加算の対象となるのが、一般的に相続人となる配偶者や子なので、孫に贈与することで生前贈与加算の対象になりません」

一方で、減税方向に改正される税制も。それが“相続時精算課税制度”(以下、精算課税制度)だ。

「これまでの精算課税制度は、贈与額2500万円まで非課税になるものの、相続時に贈与額はすべて遺産額に加算されて相続税が計算される制度でした。控除枠もなく、メリットは感じられないものだったのです。しかし、来年から年110万円の控除が創設されます。こちらは相続時に遺産額に加算する必要はありません。死去7年以内の贈与の場合でも不要です。そのため、節税効果が期待できるようになります」

■相続した空き家売却で3000万円控除も

預貯金と同様に気がかりなのが、土地の相続についてだ。

6月7日の参議院本会議で“改正空き家対策特別措置法”が可決・成立したため、年内には相続した故郷の住居などを空き家で放置しておくと、自治体から“管理不全空き家”に指定され、想定外の固定資産税がかかる可能性が。

「固定資産税は、家や建物の価値に応じてかかる税金で、基本的には毎年、その不動産価値の1.4%分が税金として発生します。ただし、200平方メートルまでの住宅用の土地に関しては、固定資産税を6分の1に安くする特別措置があります」

しかし、地方で管理不全の空き家が増えて問題になったことで、’15年に〈空き家対策特別措置法〉が成立。今回の改正では、自治体が勧告を出した時点で“管理不全空き家”に指定し、6分の1に安くなっている固定資産税の特例措置を外して、税を最大6倍にして対策を進めようというものだ。

「たとえば、200平方メートルの土地で不動産価値が1000万円であれば、これまでは約2.3万円の固定資産税で済んでいましたが、今後は管理不全空き家に指定されると毎年約14万円支払わなければなりません」

管理不全空き家に指定されないためには、近所から苦情が出ない程度に管理しておく必要がある。

「条件を満たせば、相続した空き家を売却した譲渡所得に3000万円の特別控除枠があります。可能なら早めの売却を」こうしたポイントを押さえて、相続大増税時代に備えよう。

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