マウスのレム・ノンレム睡眠で脳幹脳波が逆の働き、北海道大学・東北大学

北海道大学大学院、東北大学・東北大学大学院の研究グループは、英国ストラスクライド大学と共同で、マウスのレム睡眠では脳幹脳波が記憶固定化に重要な海馬脳波と協調し、ノンレム睡眠では海馬脳波を抑制していることを解明。記憶の固定化・消去のメカニズムの解明が期待される。

夢を見ているレム睡眠では脳幹の橋でP波、海馬でシータ波が発生し、脳の休息に重要なノンレム睡眠では海馬で鋭波リップルが発生する。どの脳波も記憶の固定化に重要とされる。P波は長い間マウスには存在しないとされていたが、2020年に研究グループが世界で初めてマウスのP波の記録に成功した。

今回、レム睡眠中に脳幹で発生するP波が、マウスのノンレム睡眠でも発生していることを発見。そこで、P波と海馬脳波との関連を検討したところ、レム睡眠P波は記憶に重要な海馬脳波(シータ波)と協調して作用していたが、ノンレム睡眠P波は記憶に重要な海馬脳波(鋭波リップル)を抑制していた。ノンレム睡眠とレム睡眠では、同じP波が記憶固定化に異なる役割を持つ可能性があることを明らかにした。これはアカゲザルでも観測されている。

記憶固定化でのノンレムP波とレムP波の役割の差は、今後マウスの行動レベルで調べる必要があるという。また、P波は古くより夢の発生メカニズムとされ、P波の研究は夢見の神経回路や夢の生理的意義に迫れる可能性がある。レム睡眠の夢は奇想天外でストーリー性が高いが、ノンレム睡眠の夢は短く思考的と言われる。睡眠ステージにより夢の内容が異なるのは、P波の生理的役割の違いによる可能性があり、今後解明の必要があるとしている。

論文情報:

【SLEEP】Pontine waves accompanied by short hippocampal sharp wave-ripples during non-rapid eye movement sleep

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