広大な森を舞台に幻想的に描く 老大工と栗売りの孤独な人生 「栗の森のものがたり」予告

2023年10月7日より劇場公開される、イタリアとユーゴスラビアとの国境に位置する広大な森を舞台に、ケチな棺桶職人と、夢見る栗売りの孤独な二人の人生を幻想的に描き出し、スロヴェニア国際映画祭で最優秀作品賞を含む11部門を受賞した映画「栗の森のものがたり」の、メインポスタービジュアルと予告編が公開された。

ポスタービジュアルは、忘れ去られた大地で戦争から戻ってこない夫を待つマルタ、美しい栗の森、戻らぬ一人息子を待ち続ける妻を亡くした老大工のマリオの過去をあしらった、映画の静謐な情感を表したデザインとなっている。予告篇では、「夢か現かお伽噺みたいな話しさ」というナレーション通りの、幻想的な映像・音楽の数々に、静かな哀しみと過ぎし日のあたたかい思い出が映し出された映像となっている。

「栗の森のものがたり」の舞台となるのは、1950年代の、栗の森に囲まれたイタリアとユーロスラビアの国境地帯にある小さな村。第二次世界大戦後、長引く政情不安から人々の多くは村を離れ、残された者たちは家族や隣人をただ待ち続けていた。老大工のマリオは、家を出たまま戻らない一人息子からの連絡を待ち続け、栗売りのマルタは、戦争から戻ってこない夫からの手紙と数枚の写真を唯一の手掛かりに、現在住んでいるであろうオーストラリアに旅立とうとしていた。そんなある日、マルタとマリオは出会い、互いの身の上を語りながら、その境遇を思いやる。そしてマリオはマルタにある提案を持ち掛ける。

監督・脚本・編集を手掛けたのは、本作が長編デビューとなるスロヴェニア出身のグレゴル・ボジッチ。ロシアの文豪アントン・チェーホフの短編小説にインスピレーションを受け、人生の機微を甘くほろ苦く描く。フェルメールやレンブラントといったオランダの印象派の画家に影響を受けたというボジッチ監督は、35ミリとスーパー16ミリフィルムを駆使し、絵画のように風景を切り取っている。

出演は、賭け事が大好きで病弱な妻にも辛らつな言葉を浴びせる老大工マリオ役に、イタリアの俳優マッシモ・デ・フランコヴィッチ。お金を貯めて栗の森を離れようと気をもむ最後の栗拾いマルタ役を、クロアチアで活躍するイヴァナ・ロシュチッチが演じる。人生を重ね深みある顔に神々しさを漂わせるマリオの妻ドーラ役を、イタリアで200以上の演劇や映画に出演するジウジ・メルリが務める。音楽はアイスランドのヘクラ・マグヌスドッティル。人々の喜びや悲しみ、喪失感の無常さをテルミンの音色で表現している。

【作品情報】
栗の森のものがたり
2023年10月7日(土)よりシアター・イメージフォーラムほか全国順次公開
配給:クレプスキュール フィルム
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