兵庫県弁護士会は3日、受刑者が髪を切る際に、戸籍上の性別だけではなく、性自認にも配慮するよう法務相らに勧告した。神戸刑務所に収容されたトランスジェンダーの50代受刑者からの人権救済申し立てを受けた勧告で、同弁護士会は「処遇指針を見直さないといけない問題。同様の勧告は2回目で、今回はより重い措置である『警告』に近い勧告だ」としている。
同弁護士会によると、受刑者は戸籍上は男性だが、性自認に基づく身体的な手術を受け、神戸刑務所でも「性同一性障害と同様の傾向を有する者」として、単独室で処遇されている。
刑務所では、男性受刑者は規則で丸刈りのような短髪に刈り上げる。同弁護士会は2018年、性同一性障害の受刑者らの人権救済申し立てを受け、女性に認められた髪形選択の容認などを法務相らに勧告した。50代の受刑者は勧告後も変わらない状態に諦めを抱き、長髪の要望をせずに丸刈りを受忍していたという。
今回の勧告では、性自認に反する取り扱いは憲法違反とし「刑事収容施設で一定の制約を受けるとしても必要最小限に限定されるべき」と指摘。戸籍上の性別や集団処遇などを理由に画一的に髪を切る行為に「髪形の自由、性自認に沿って生きる権利を不当に制約し、人権侵害が認められる」とした。
同弁護士会はこのほか、性同一性障害や同様の傾向がある受刑者に対し、収容室に設置する南京錠の鍵の管理や解錠について、災害発生時を踏まえた適切な方法を検討する▽受刑者がホルモン療法を希望した場合は、手続きや診療制度を教示する-ことを「要望」として記した。
神戸刑務所は取材に「内容を見ていないのでお答えできない」とした。(篠原拓真)