米の国際相場上昇 インド、一部輸出禁止で

世界最大の米輸出国インドが、7月下旬にインディカ(長粒)種の白米輸出を禁止したことを受け、米の国際相場が値上がりしている。小麦や大豆などの穀類に比べ落ち着いていた世界の米相場に混乱が及んできた。

世界の米相場の指標となるのは、タイのバンコクから輸出される精米価格。7月26日の取引では基準となる白米(5%砕米)が、1トン当たり572ドルを付け、インドの禁輸前の前回(同12日)の取引価格に比べ7%上がった。2020年の春以来の最高値だ。インドに次ぐ米輸出国のタイ、ベトナムでも、深刻な干ばつで米の減産が懸念されている。

地元紙によると、タイやベトナムの輸出業者は農家からの買い入れ価格を引き上げて米の手当てを急ぐが、先行きの供給不安から急増する注文に追い付いていないという。

インドは世界最大の米輸出国。近年は年間2000万トンを超え、国際市場に出回る米の4割を占める。国内で1億3000万トン(精米)を生産する米大国だが、インド政府は「米の国内価格は上昇傾向にある。小売価格は1年間で11・5%、過去1カ月で3%上昇した」(消費者・食品公共配給省の声明)ことを懸念。7月20日付でインディカ種白米の輸出を即日禁じた。

昨年9月にこの種類の米に20%の輸出関税を導入したものの、輸出量が拡大したため、今回は輸出禁止に規制を強化した。

インドの米輸出の多くは、高級な香り米(バスマティ)と、アフリカ向けの安価なパーボイル米。今回対象の白米は全輸出量の半分以下のため「禁輸の影響は限定的」という見方もある。

国連食糧農業機関(FAO)が毎月発表する世界の米相場によると、6月の米の国際指標価格は126で1年前に比べ14%高い。米の価格が高騰すると、アジアやアフリカ中南米など米に依存する国々で政情不安などが起きやすい。国際機関は輸出国が安易に輸出規制に走ることを警戒している。(特別編集委員・山田優)

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