プロスト「アルピーヌF1の現状に悲しみと苦痛を感じる」ロッシ元CEOを「無能」と痛烈批判

 4度のF1世界チャンピオンであるアラン・プロストは、アルピーヌF1チームに起きている現在の混乱に「悲しみと苦痛」を覚えていると述べており、元CEOのローラン・ロッシに大きな責任があると示唆した。

 アルピーヌでは最近、上層部で多数の交代が行われている。まず、ブルーノ・ファミンがアルピーヌ・モータースポーツ担当副社長に昇進、ロッシに代わってフィリップ・クリーフがCEOに就任した。その後、チーム代表のオットマー・サフナウアーとスポーティングディレクターのアラン・パーメイン、チーフテクニカルオフィサーのパット・フライの退任が発表され、まさに内部崩壊であるとの声も多い。

2023年F1第3戦オーストラリアGP オットマー・サフナウアー(アルピーヌ代表)

 この最近の変化については、ベルギーGPの金曜7月28日に突然発表されたため、チーム関係者はメディア対応に追われ、ファミンは投げかけられる難しい質問に対する答えをほとんど持ち合わせていなかった。

 プロストは、2017年にルノーF1のアドバイザーに就任し、2019年にはノンエグゼクティブディレクターとなり、チームがアルピーヌに名称変更した2021年にも同ポジションに留任した。しかし2022年シーズンに向けてプロストは離脱、その際にロッシを強く批判していた。

 プロストは、今回のアルピーヌの変化について、フランスの日刊紙『L’Equipe』とのインタビューで語り、アルピーヌの上層部や、過去数年、F1チーム運営において企業的アプローチに問題があったとして批判した。

2021年F1第20戦カタールGP アラン・プロストとフェルナンド・アロンソ(アルピーヌ)

「私はこのチームを愛しているし、現在の状況について悲しみと苦痛を感じている」とプロストは語った。

「もっと良い状況にあっていいはずだし、成功するために必要なものはすべてそろっている。何が間違っていたのか理解するには、経緯を見る必要があると考えている」

「過去30年にわたる偉大なサクセスストーリーを見ると、シンプルな構造が見えるだろう。それは企業の組織図とは違い、3名から4名の強力な個性の持ち主と、勝てるドライバーの組み合わせによるものだ」

 プロストは、フェラーリやメルセデスの構造を例に挙げ、「彼らはF1の規範を熟知し、必要な機敏さと柔軟性を持って部下に決断を委ねていた」と述べ、ジャン・トッド、ニキ・ラウダ、トト・ウォルフといった強力な個性派がチームを統率、彼らは経営陣のトップからチーム運営を任されるだけでなく、支援も受けていたことを指摘した。

「レッドブルがポルシェとパートナーシップを結ばなかったのは、F1を知らない人々によって下される重要過ぎる決断に屈しないためだった」

「私はルノーで過ごした数年の間に、ブローニュ=ビヤンクールの本社の廊下で、『F1は担当者が家から管理できるシンプルなスポーツだ』と言われているのを何度も聞いた」

「それは大きな間違いだった。最後に残ったディレクターのローラン・ロッシが、一週間前にルカ・デメオに解任されたことが、それを示している」

「ローラン・ロッシは(自分を過大評価する)ダニング=クルーガー効果の最たる例だ。無能なマネージャーが傲慢で部下に対する思いやりを持たないことで、自分の無能さを克服できると思っている」

「彼は18カ月間アルピーヌのCEOだった。彼は最初からすべてを理解しているつもりだったが、実際はまったくそうではなかった。彼のマネジメントによって、表彰台や優勝を達成するために2016年からチームが築いてきた勢いは止まってしまった」

アルピーヌCEOローラン・ロッシ

 ベルギー金曜日のFIAの記者会見で、ファミンはアルピーヌは、100レース計画の第2ステージに進み、「土台を強化してさらに前に進む」として、前向きな状況であると主張した。

 しかしプロストは、現在のアルピーヌに急成長を遂げるだけの能力があるのか疑問視している。

「金曜日に下された決定によって、人々が入れ替えられたことが、チームにとって有益なショックであることを期待しよう」とプロストは語った。

「ルノーの成功を振り返ると、フラビオ・ブリアトーレと伝説級のドライバーであるフェルナンド・アロンソが、経営陣(パトリック・フォールとルイ・シュバイツァー)から支えられており、当時はスペシャリストによる迅速な意志決定という理念が実践されていたことがわかる」

「F1のディレクターたちが大企業の経営会議に招かれ、反応性と柔軟性について語ることが多いのは興味深いことだ。その逆(企業幹部がF1について話すために招かれること)は滅多にない」

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