暑かった7月、車内放置の1歳児に「危ない」 パチンコに興じた母は逮捕…悲劇防いだ従業員の機転

感謝状を受け取った西野佳澄さん(左)と藤岡宏章さん=垂水署

 神戸市垂水区のパチンコ店駐車場で車内に放置された1歳男児を発見し、通報して安全確保に貢献したとして、兵庫県警垂水署は、店長の藤岡宏章さん(45)と従業員の西野佳澄さん(32)に感謝状を贈った。夏場の車内は熱中症のリスクが高く、わずか15分で命の危機にさらされる場合もある。「災害級」の暑さが続く中、悲劇を未然に防いだ功績がたたえられた。

 店はロトプレーヤー垂水店(同区下畑町)。西野さんは7月1日夕方、駐車場を巡回中、屋根がない場所に止めてある軽自動車に気付いた。違和感を覚え、フロントガラス越しに車内をうかがうと、後部座席のチャイルドシートに座った男児が見えた。

 車の窓は15センチほど開き、冷房は効いていた。男児は元気そうだったが、この日は曇っていたが風はなく、蒸し暑く感じる天気だったという。熱中症や車上荒らしの可能性も頭をよぎり、急いで藤岡さんに報告。現場に駆けつけた藤岡さんが110番した。

 西野さんは店内アナウンスで「至急、車にお戻りください」と繰り返した。数分後、母親とその交際相手が車に戻り、垂水署員が保護責任者遺棄の疑いで2人を逮捕。この日の最高気温は24.8度あり、署によると、男児は約40分間、車内に放置されたが、幸い健康に異常はなかったという。

 日本自動車連盟(JAF)の検証テストによると、気温35度の炎天下に止めた場合、車内の熱中症指数は15分で人体にとって危険なレベルに達する。同連盟は「『少しの時間だから』という油断が熱中症を引き起こす」と注意を呼びかけている。藤岡さんは「車内放置で亡くなる事例をニュースで知り、気にかけていた。今後も掲示物などで周知を続けたい」と話した。(小野坂海斗)

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