ダウンタウン松ちゃんも訪れた…家島の魅力、絶やさぬため 急死した兄の旅館を継いだ妹夫婦の挑戦

高島一彰さん亡き後、旅館を引き継いだ妹の桝本里果さん(右)と夫の健輔さん=いずれも姫路市家島町宮

 故郷の家島を愛し、家島の魅力を発信し続けた名物旅館経営者が3月末、突然この世を去った。兵庫県姫路市家島町宮の割烹(かっぽう)旅館「志(し)みず」を営んでいた高島一彰さん。51歳の若さだった。生前、明るいキャラクターで家島の盛り上げ役を担い、料理人としても地域の豊かな食材を使った料理に腕を振るった。現在、旅館は妹夫婦らが切り盛り。兄の遺志を引き継ぎ、秋ごろには宿泊型のワーケーション施設をオープンさせる。(辰巳直之)

 高島さんは、経営者としてだけでなく料理人としても旅館を引っ張った。豊かな海の幸を手間を惜しまず調理し、個性的な料理をいくつも提供した。人気メニューの焼きワタリガニは、うまみが漏れないよう弱火で数時間も焼き上げるこだわりぶりだった。家島観光事業組合副組合長も務め、ヒメボタルや夜光虫の観察会などを企画。家島の魅力を県内外へ伝えることに力を尽くした。

 旅館は2015年、レストランやホテルの格付け本「ミシュランガイド」の県特別版で、快適な宿泊施設に選ばれた。テレビ番組で何度も紹介され、タレントや著名人が数多く訪れた。人気お笑いコンビ「ダウンタウン」の松本人志さんは志みずの存在を情報番組で知り、自ら希望して自身の出演するバラエティー番組で訪ねてくれたという。

 高島さんは3月24日朝、旅館の従業員用浴室で倒れているところを発見された。脳出血だった。数日前、家族に頭痛を訴えていたという。

 「仕事に妥協を許さないけど、笑顔を忘れない人でした」と、妹の桝本里果さん(43)が振り返る。今は、夫の健輔さん(39)とともに旅館経営にあたり、料理や接客に走り回る毎日。2人は「兄が生きていた頃と変わらず、笑顔あふれる旅館にしていきたい」と意気込む。

 高島さんが開業を進めていたワーケーション施設も、桝本さん夫婦が受け継ぎ、秋には開業予定だ。仕事をしながら長期滞在できる「志みずアイランドテラス」。4年前、高島さんが旅館の隣にあり、銀行の寮だった建物を買い取って準備していた。

 ワンルーム、メゾネットタイプの計10部屋を備え、里果さんは「海が見える部屋でゆっくり過ごしてもらい、家島の良さも知ってもらいたい」と話す。兄の思いをくみ、家島への移住者が増えることを期待している。

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