Jリーグシーズン移行の難しさ①国際大会が目白押しの現状/六川亨の日本サッカー見聞録

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Jリーグのシーズン移行を検討する分科会の、4回目のメディアブリーフィングが8月2日に開催された。過去2回の分科会の報告をまとめた資料も合わせて公開された。現状では最短で26-27シーズンからの春秋制への移行を検討しているものの、まだまだ検討課題が多いようだ。

シーズン移行に関しては、これまでも何度か検討課題として話題になった。発端はJFA(日本サッカー協会)の田嶋幸三会長が、ヨーロッパのリーグ戦とシーズンを合わせることを提唱したことだった。しかしJリーグは検討した結果、村井満前チェアマンはシーズン移行問題を凍結。それがまた、今シーズンから検討されるようになった。

その一番の理由はACLがこれまでの「春秋制」から「秋春制」にシステムが変わったことだった。元々、中東のリーグは「秋春制」を採用してきた。これまでのACLでは、春先のグループリーグの時のチームと、秋から始まるラウンド16以降では選手も入れ替わり、違うチームになっていた(それでもチーム力は大して落ちていなかった)。

しかし今シーズンからAFC(アジアサッカー連盟)はACLの開催時期を変更。2月スタートから、浦和が出場するプレーオフは8月スタートの「秋春制」に舵を切った。近年のアジアの主要な国際大会の開催国は中東勢が占めている。彼らのオイルマネーに対抗する術を、もはや極東勢も東南アジア勢も持っていなかったのかもしれない。

「秋春制」へと中東勢やACLのシーズンに、Jリーグも「はい、そうですか」と合わせるのは自然な流れと言えるのかと言えば、そうとも言い切れない問題が山積している。だからこそJリーグもシーズン移行の開始時期は26-27シーズンと含みを持たせたのだろう。

シーズンが移行するまでの、今シーズンを含めた簡単なカレンダーを紹介しよう。新ACLのグループステージは9月にスタートし、12月13日で終わる。これはJリーグとあまり変わらないため並行して開催される。

12月12日からはサウジアラビアでクラブW杯がスタートし、日本からは22年のACL王者である浦和が参加する。そして新ACLのラウンド16は24年の2月に始まり5月11日と18日が決勝戦だ。こちらもJリーグと並行して開催されるため、勝ち進んだら横浜FMや川崎F、甲府らはハードなスケジュールとなるのは間違いない。

こうしたリーグ戦の日程に加え、1月にはアジアカップが、2月にはU-23アジア選手権がカタールで開催される。日本代表は海外組が主力とはいえ、Jリーグに所属する選手は年末年始のオフが短くなるのは必然だ。さらに2月にはパリ五輪の予選を兼ねた大会が開催される。国内リーグがスタートし、ACLも同時並行のため、U-23日本代表は1クラブ3名までの選出という条件が出されるかもしれない。そしてそれは、7月に開幕するパリ五輪にも適用されるだろう。

さらに24-25シーズンから、AFCはACLをリニューアルし、24チームによるT1(日本からは3チームが出場)と、AFCカップを改めたT2(日本からは1チームが出場)の新構造による大会の創設を予定している。12月には、例年どおりクラブW杯が予定されていることにも変わりはない。

現状、出場チームの負担は勝ち上がれば勝ち上がるほど増えることは間違いない。問題はCL(欧州チャンピオンズリーグ)のように、コストに見合うリターンがあるのかどうか。AFCはその資金をどこから捻出しようとしているのかだ。

こうした過密日程に加え、25年には4年ごとに開催される32チームを集めての新クラブW杯(現状では浦和とレアル、チェルシー、マンチェスターC、パルメイラス、フラメンゴらに出場資格があるとされている)がアメリカで開催される。恐らく翌年のW杯をにらんでのプレ大会となるだろが、FIFA主催の大会だけにこちらも賞金の額が気になるところだ。

そして26年はアメリカなど3か国によるW杯、27年2月にはサウジアラビアでアジアカップと国際大会は続く。ヨーロッパのクラブの選手は、過密日程でもCL優勝を目指して戦い、プレシーズンマッチで酷暑の日本にも来日する。それは名誉であり、仕事であり、自身のグレードアップにもつながるからだろう。ではJクラブがアジアの大会に参加するメリットが、競技力のレベルアップや東南アジアなどでのマーケット拡大以外にどれほどの価値があるのか。

現状では不確かな部分も多いため、Jリーグとしても慎重にならざるを得ないのではないだろうか。外的要因だけでもこれだけ不透明な部分があるだけに、やはりシーズン移行は慎重に議論を何度も重ねるべきだろう。

国内の問題点に関しては、また機会があったら紹介したい。


【文・六川亨】

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