町中に増える電動キックボード 手軽に乗れるがリスクもあり死亡事故も…知っておきたいことは【大石が聞く】

物事の核心に迫る「大石が聞く」。
今回は最近増えつつある「電動キックボード」です。
法改正による規制緩和で国も普及を後押ししていますが、心配されている危険性とは。

(大石アンカーマン)
「三重県鈴鹿市にありますこちらのフヂイエンヂニアリング。電動キックボードを製造しているんですけれども、今回の法改正には危機感を覚えているということです」

7月11日、伺ったのは三重県鈴鹿市の自動車会社、フヂイエンヂニアリング。

もともとスポーツカーなどの開発、製造を手がけていましたが、4年ほど前から電動キックボードも作っています。

(大石アンカーマン)
「これですね、デザインからして次世代型モビリティという感じですよね」

特徴はこのユニークなフォルム。

三輪で、スケートボードのように重心を移動させて曲がる「Sunameri(スナメリ)」や、荷物を収納できる「PUFFIN(パフィン)」の2種類があります。

(大石アンカーマン)
「これは扱いとしては何になるんでしょうか」

(フヂイエンヂニアリング 藤井充 社長)
「ミニカー登録の車両になります」

(大石アンカーマン)
「免許がないと乗れない?」

(フヂイエンヂニアリング 藤井充 社長)
「普通自動車免許以上の免許が必要です」

現在販売している電動キックボードは軽自動車より小さな車、ミニカーの扱いで、普通自動車免許が必要です。

試乗させてもらうと…

(大石アンカーマン)
「人生初体験、電動キックボード。どうですか社長?」

(フヂイエンヂニアリング 藤井充 社長)
「ばっちり乗れてますよ。このまま20キロ近くまでは出せます」

(大石アンカーマン)
「今これ時速6キロです」

(フヂイエンヂニアリング 藤井充 社長)
「これが歩行者速度ですね」

(大石アンカーマン)
「続いてはこちらですけども」

(フヂイエンヂニアリング 藤井充 社長)
「これはSunameri(スナメリ)です」

(大石アンカーマン)
「今4キロですけど、4キロでもスピード感ありますね」

こうした電動キックボード、国が規制緩和によって普及を後押ししています。2022年4月、道路交通法を改正し、新しく電動キックボード向けに「特定小型原付」という区分を新設。

2023年7月から最高時速20キロ以下のものについては、16歳以上なら運転免許が不要に。そしてヘルメットの着用は「努力義務」に。つまりかぶらなくても罰せられません。

さらに、最高時速6キロ以下に切り替えれば歩道も走れるんです。

上限速度の時速20キロを出してみると…

(大石アンカーマン)
「結構早い、結構早いぞ。肩で風を切る感じ!早い、早い!」

(大石アンカーマン)
「時速20キロっていうのは思った以上にスピード感ありました」
(フヂイエンヂニアリング 藤井充 社長)
「そうですね」

(大石アンカーマン)
「この20キロで走行してヘルメットをつけなかった場合、どんなリスクがありますか?」
(フヂイエンヂニアリング 藤井充 社長)
「ヘルメットを着けていないと、時速20キロで前が引っかかり前転するような転倒をした場合、頭から先に地面に落ちる可能性が高い。受け身が取れればいいが、頭部挫傷など大きな怪我につながる恐れが」

より身近になった、電動キックボード。しかし規制緩和による急速な普及は危険だと指摘します。

(フヂイエンヂニアリング 藤井充 社長)
「(電動キックボードの)多くは、8インチや6インチのホイールが付いている。その場合、コンビニに車道から上がる段差が5センチや4センチあるんですが、段差を乗り越えるときにつんのめってしまうことも起こりえる」

(大石アンカーマン)
「5センチの段差があると考えると、これで乗り越えるのはなかなか難しいですね」
(フヂイエンヂニアリング 藤井充 社長)
「この状態だとだいぶ危険ですね」

(大石アンカーマン)
「これぶつかった時に乗り超えられないとどうなりますか?」
(フヂイエンヂニアリング 藤井充 社長)
「柔道でいう背負い投げみたいに、フロントタイヤを回転の中心に回ってしまう」

現在シェアリングやレンタルで普及が進むものの多くはタイヤが小さいため、小さな段差でも乗り越えられず、転んでしまう恐れも。

実際、2センチほどの段差でも…

(大石アンカーマン)
「15キロくらいか…直に来ますね、ダイレクトにこの段差を感じます」
「もう少し高いと前の方につんのめってしまうような感じがする」

東京では、2022年9月、ヘルメット無しで電動キックボードに乗っていた男性が車止めに接触して転び、頭を強く打って死亡しました。

日本でも、2022年度に電動キックボードが関連して起きた交通事故は41件と年々増えています。

規制緩和を推し進める当の警察は、違反車両などの取り締まりに力を入れつつ、安全啓発を急いでいます。

(大石アンカーマン)
「法改正によって増えてくる可能性がありますから、どんなことを心構えとして持っていないといけないですか?」
(三重県警 交通安全対策室 矢田博也 室長)
「便利な乗り物だが、道路を使用するので、しっかりルールを守ることが大事」

(大石アンカーマン)
「免許ある方でも、1回乗ってみると何が危険かは体でわかるでしょうから、1回体験してほしいですね」
(三重県警 交通安全対策室 矢田博也 室長)
「なかなか普段乗るものではないので、初めて乗る方には、乗車会などで体験していただくというのは一つ大事なことかなと思います」

気軽に移動出来て、駐車などの手間も大幅に少なくなった便利さで更に増えそうな電動キックボード。

しかしこれが歩道も車道も行き来することで、歩行者や他の車にとって危険な存在になりかねない恐れも見えています。

2023年7月13日放送 CBCテレビ「チャント!」より

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