避難民に紛れ込む日本兵 新城喬さん(7) 捕らわれた日<読者と刻む沖縄戦>

 雨の中、泥道を黙々と歩いた新城喬さん(91)=北中城村=の家族は摩文仁村(現糸満市)の摩文仁にたどり着きます。「摩文仁の集落はまだ焼けていませんでした」と新城さんは語ります。民家は避難民であふれていました。

 新城さんの記憶では、話の内容から沖縄県庁の職員らしき人々が摩文仁にいたといいます。「よく、ここまで来たな」と声をかけてもらいました。

 摩文仁も危なくなると考え、新城さんらは移動を続けます。米須を目指すつもりでした。

 《敵軍はすぐ後ろまで来ているという、後からどんどんやってくる避難民らの情報があったので、うかうかできず急いで逃げなければなりませんでした。住民や、住民に扮(ふん)した兵士たちは、蟻(あり)のように長々と列を作って、もっと南へと当てもなく進んでいきました。》

 この頃、新城さんは沖縄の住民に紛れ込む日本兵の姿を目撃しています。軍服を脱ぎ、民間人の服装に着替えるのですが、見分けは付きました。「沖縄の住民は背が低くて、色が黒い。やまとぅの兵隊はすぐ分かりました」と新城さんは語ります。

 《あきらめか、開き直りなのか、いや何も考えず、ただ歩いているだけなのか。頭上の敵機にも恐怖を感じず、もはや逃げる者もなく、死んでいく人たちにもお構いなしで、ただ黙々と進むだけでした。》

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