小暮卓史もテンションMAX。待望の“エボ2”導入でランボルギーニ・ウラカンは「別のクルマ」に進化

 2023シーズン、ランボルギーニは世界のGT3市場に向け、ウラカンGT3の2度目のエボルーション・パッケージとなる“エボ2”を導入した。すでに1月のIMSAウェザーテック・スポーツカー選手権開幕戦デイトナ24時間レースを皮切りに、GTワールドチャレンジ・ヨーロッパやDTM、ADAC GTマスターズなど、欧米の各シリーズで活躍を重ねている。

 そんな“エボ2”が、いよいよ日本のレースでも見られる時がきた。8月5〜6日に富士スピードウェイで行われるスーパーGT第4戦で、88号車JLOC ランボルギーニ GT3がこのエボ2へと生まれ変わるのだ。(※記事末尾に旧型車両との比較写真あり)

■外見以上に大きなステップを遂げた“中身”

 もともとJLOCでは、今季途中で2台の“エボ”を“エボ2”へと切り替える予定でいた。則竹功雄代表によれば「我々の“エボ”もパフォーマンスが悪いわけではなかったですし、(エボ2の)初期トラブルなどについても把握していましたので」と、本国・イタリアと連絡を取り合いながら、シーズン前半は切り替えのタイミングを図っていたのだという。

 そこへ来て、前戦鈴鹿で87号車Bamboo Airways ランボルギーニ GT3がアクシデントに巻き込まれ、大クラッシュしてしまったことがエボ2導入の最終的なトリガーとなる。ランボルギーニは悲運のクラッシュに遭ったJLOCに配慮し、第4戦に間に合うタイミングで新車のエボ2を用意、日本へと送り込んだのだ。この新車が88号車として使われ、第3戦まで88号車として走っていた個体が今回から87号車として使用されている。

「3週間くらい前に届いた」(則竹代表)というエボ2は、岡山国際サーキットで1日のみのシェイクダウンを行い、レース本番へと臨んでいる。第4戦の搬入日には、改められた88号車を一目見ようと、多くの関係者が入れ替わり立ち替わりJLOCのピット前を訪れていた。

 外観上でも、エンジンのエアインテークがルーフ後部に移されたことをはじめ、リヤハッチ上のシャークフィン、フロントバンパーの開口部、リヤバンパー周りなど、“エボ”からは大きな進化を遂げていることが分かるが、その“中身”はルックスを上回る進化を遂げているようで、則竹代表によれば「間違いなく進歩している。ほぼ、別のクルマ」だという。

「エボまではエンジンはほぼアウディ(R8 LMS GT3)と一緒だったけど、今回はFIAに登録しているエンジンの中身が全然違うし、ブレーキのキャリパーも大きいし。だから、“初めてランボルギーニ・スクアドラ・コルサが作ったクルマ”なんじゃないかな」

エボ2では、ルーフ上にエンジンのエアインテークが設けられている
エアインテーク後方のリヤハッチ上には、シャークフィンも備わる

 シェイクダウンでステアリングを握った小暮卓史も、そのポテンシャルの高さに驚いたようで、「まだちょっと乗っただけなので……」と前置きは挟みつつも、インプレッションを語る様子は明らかにテンションが高い。

「やっぱり完成度が高いですよ。乗りやすいですし、パフォーマンスも上がっています。まずは空力、ダウンフォース量が増えていますね。スロットルが変更されていて低〜中速域で踏んだときの立ち上がりとかも良くなっていますし、あとは制御も良くなっています」

 この制御系の進化がエボ2におけるひとつのカギのようで、スロットルが変更になったことでエンジンブレーキの効き具合が細かく設定できるようになっているほか、トラクションコントロールもきめ細やかなセットアップが可能だという。

コンビを組む元嶋佑弥と話す小暮卓史 2023スーパーGT第4戦富士

 基本的には変更点すべてがポジティブな方向に働いているようだが、まだ走り始めて間もないため、各所のセットアップには煮詰めが必要で、“未知数”の部分も多いという。ダウンフォース量についても「データ上ではフロントが増えているのですが、乗っている感覚としてはリヤの方が増えているんです。そこら辺も、正直まだつかめていない」のが現状だ。

「ブレーキそのものも良くなっていますが、そのブレーキの熱とか、グリップが高い日本のタイヤと路面でどうなるかなど、もっと走ってみないと分からない部分もありますね」と小暮。

「前のウラカンにあったピーキーさが少し取れて、いまの“グリップさせながら走る”という方向には、合っているような気がします。これまでのクルマは“ブレーキで奥まで突っ込んで、一気に向きを変えて加速”という感じでしたが、このクルマは“タイヤのグリップをつかみながら走っていく”感じで、ボトムスピードが上がりそうな気がしますね。あとはこっち(エボ2)の方がタイヤにも優しいような気がします」

 なお、ステアリング上のスイッチ類なども刷新され、「ずいぶん変わりました。そのあたりはもう一回復習しておかないと変なミスをしてしまいそうなくらい、変わっていますね」と小暮は笑う。

 今回の“日本デビュー”をサポートするため来日したランボルギーニのエンジニアによれば、現在世界では13台のエボ2が導入されており、バックオーダーは15台分を抱えているという。JLOCでも、今週末の88号車の感触が良ければ、87号車も可能なタイミングでエボ2へと切り替える構えで、まもなくアップデートキットが届くことになっている。

「テンションは上がってますね。明日からが楽しみです」と終始笑顔で語った小暮。まずは土曜日、ライバル勢とともに走る公式練習で、エボ2パッケージの真価が明らかとなる。

エボ2のフロントまわり
旧型となるエボ(87号車)のフロントまわり
エボ2のリヤまわり
旧型となるエボ(87号車)のリヤまわり
エボ2のマシンサイド部。旧型ではこの位置にあったエアインテークがルーフ上に移動したため、スッキリとした造形に
旧型となるエボ(87号車)のマシンサイド部
JLOC ランボルギーニ GT3のシャークフィン

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