ミッドウィーク試合は皆、冴えなかった…/原ゆみこのマドリッド

[写真:©Atlético de Madrid]

「見事に揃って失望させてくれるとは」そんな風に私が嘆いていたのは木曜日、大西洋の向こうで夜中にプレシーズンマッチをしたレアル・マドリーとアトレティコも白星を掴めなったことを知った時のことでした。いやあ、折しも今週は水曜の夜から、マドリッド勢が試合ラッシュに入り、国内でプレーした弟分、ヘタフェとラージョはYouTubeで中継を見ることができたんですけどね。さすがに深夜まで営業して有料チャンネルのサッカー中継を流してくれるバル(スペインの喫茶店兼バー)はないため、兄貴分の方は泣く泣く諦めるしかなかったんですが、終わってみれば、見ないでも良かった内容だったとなれば、悔しさも半減する?

いえまあ、話を順番に進めていくことにすると、いよいよプレシーズンマッチもあと数えるばかり。各チームも8月第2週のリーガ開幕戦がいよいよ視野に入ってきた中、ヘタフェは、いえ、何でグラナダ戦の開催地にプエルトジャノ(マドリッドから南に2時間程の街)を選んだのかは知りませんけどね。もしや昨季は2部で1位となり、最短Uターンしてきた相手のホームタウンとの中間地点だったとか?何にしろ、2年前にカランカ監督の下で降格したチームと、今のパコ・ロペス監督のチームはかなりメンバーが変わっていた上、プレシーズンの恒例でヘタフェ同様、グラナダも選手のネームが背中に入っておらず。先日、マドリーからレンタル再移籍をしたバジェホもいなかったため、知っている顔はモウリーニョ監督時代にマドリーにいたカジェホンぐらいだったんですが、これがかなりしぶといチームに仕上がっていたんですよ。

もちろん、ヘタフェにもまだまだ足りないところがあって、いえ、前半22分には新加入のFW、チョコ・ロサーノ(カディスと契約満了)がガストンのクロスをヘッドで決めてくれたんですが、残念ながら、オフサイドで移籍後初ゴールにはならず。一緒に先発したボルハ・マジョラルも不発で0-0が続いているうち、40分程遅れてホセ・ソリージャで始まったバジャドリーvsラージョ戦の方が大変なことに。うーん、その日の先発GKがディミトリエフスキではなく、カンテラーノ(Bチームの選手)のモロだったせいもあるんでしょうかね。丁度、ヘタフェがスコアレルドローのままハーフタイム入りした頃の前半10分、左サイドからトゥンデが上げたクロスをバジャドリーのモロが反対サイドからシュート。GKモロはこれを弾いたものの、ゴール前に転がったボールをセドリックが地面から押し込んで先制されてしまうことに。

おまけにこのカメルーン出身のバジャドリーのカンテラーノは21分にもモロのラストパスをワンタッチで決めて2点目を挙げると、32分にはドリブルでエリア内に侵入し、とうとうハットトリックを挙げてしまったから、ビックリしたの何って。その日はアラベスから完全移籍をしたCBルジューヌも出ていながら、今季2部に落ちたチームの下部組織、バジャドリー・プロメサ(RFEF2部/実質4部)でプレーする選手1人にやられてしまうとは、うーん、ここまで彼らはパナシナイコスやポルトを相手に引けを取っていなかったんですけどね。フランシスコ新監督のチームも仕上がっていないところが沢山あるのがわかったんですが、その頃、後半が始まっていたボルダラス監督のチームもカンテラーノのパドリックがやらかしていたんです。

ええ、こちらは11分、サラゴサをエリア内で倒してPKを献上。ウスニに決められて1点リードされたヘタフェは、うーん、マタやラタサも入って、一時はFWがピッチに3人もいたんですけどね。42分にはGKダビド・ソリアが迷っているうち、ゴール前からグラナダの選手が上げたクロスをディエディウに頭で押し込まれ、点差が倍に。何とかロスタイムにはジェネのパスをマタがvolea(ボレア/ボレーシュート)で決めて、1-2にしたんですが、そこで時間切れとなりました。いやあ、これでせっかくブレンドフォード(イングランド5部)、お隣さんのレガネス、インデペンディエンテ・デル・バジェ(エクアドル)に3連勝してスタートしたプレシーズンマッチも先日のスタッド・ランス戦に続いて2連敗になってしまいましたからね。この土曜、ホームのコリセウム・アルフォンソ・ペレスでの新チームお披露目試合となるフィテッセ戦には何とか勝って、リーガ開幕バルサ戦への期待をヘタフェファンに持たせてあげられるといいのですが…。

一方、弟分仲間が試合を終える10分程前に後半が始まったラージョは選手を一気に8人交代して反撃を開始。25分にはエスピーノ(カディスと契約終了)が左から上げたクロスをルジューヌがヘッドで沈めて、希望が少々沸いたんですが、2点目が決まったのが45分ではねえ。こちらはバリウのラストパスをこのプレシーズンマッチ、3試合連続でゴールを挙げているアルバロ・ガルシアが撃ち込んだんですが、バジャドリーのYouTubeチャンネル実況が、「これはシュダッド・バジャドリー杯だから、引分けの時はPK戦で勝者を決めないといけない」と言っているのを聞いて、「なら、もうこのまま負けてもいいか」と思ってしまった私はラージョへの愛が足りない?

いやあ、スマホとパソコンで2試合同時に見ると目が回っちゃってねえ。結局、3-2で試合は終わったんですが、ラージョも残りのプレシーズンマッチはイギリス遠征する日曜のブライトン戦のみ。ふくらはぎを痛め、ずっと出場していないRdT(ラウール・デ・トマス)がそれまでに治るのかは不明ですが、ベベ(サラゴサ)やエヌテカ(エルチェ)は昨季後半のレンタル移籍から戻ってきたものの、カメージョ(アトレティコ)の再レンタルもまだ決まっていませんからね。まだ新規加入選手もエスピーノとアリダネ(オサスナと契約終了)の2人しかいませんし、やはり開幕トップバッターとなる11日(金)のアルメリア戦までに今季のチームメンバーが確定することはなさそうな。というか、まだ今季の新ユニフォームを発表していないのはラージョだけって、一体、どうなっているんでしょうか。

そして夜はオーランドのキャンピングワールドスタジアムでユベントス戦前のアップをする選手たちの姿をレアル・マドリーTVで見た後、ベッドに入った私だったんですが、まさか先日のクラシコ(伝統の一戦)に続いて、またマドリーが3点も取られて負けてしまうとは!うーん、この日の先発DF陣はルーカス・バスケス、リュディガー、ナチョ、そしてバルサ戦で太ももをケガして、全治3週間となったメンディの代わりにフラン・ガルシア(ラージョから移籍)だったんですが、開始1分にはマクケニーがエリア内から放ったシュートがゴールポストに弾かれ、そのボールを誰にも邪魔されずにキーンが撃ち込んでいるとはもう、気の緩み以外の何物でもない?

おまけに20分にもウェアがエリア内からフリーでシュートして、2点目を決められているとなれば、いえ、マドリーもホセル(エスパニョールからレンタル)が外してしまったり、ベリンガム(ドルトムントから移籍)がGKシュセツニーにparadon(パラドン/スーパーセーブ)されてしまったりはあったようですけどね。38分にはクロースが自陣から送ったロングパスを追ったビニシウスのシュートが決まり、何とか1点は返したんですが、いやあ、この日も撃って撃ってもゴールが入らない病が治ってなかったとは。そう、後半10分にはメンバーを6人代えて、リフレッシュしたマドリーはバルサ戦の29本を上回る計34本ものシュートを放ったんですが、そのうち枠内はたったの8本だけ。

45分にはロドリゴがエリア内ギリギリでバレンチェアに倒されながら、主審にスルーされて、PKをもらえないなどの不運もありましたけどね。ロスタイムにはブラホビッチにユーベの3点目を決められて、昨季はクラブの会計詐欺の発覚による勝ち点減点などもあり、7位で終了。UEFAの処分で今季のコンフェレンスリーグ出場もできなくなったチームに3-1で負けて、鬱憤晴らしされているって、これはちょっと1週間後のリーガ開幕アスレティック戦を控えて、大きな懸念が出てきた?

いえ、最後の2試合で計6失点もしたことを問われたアンチェロッティ監督は、「ウチは敵を上手く見張れず、カウンター攻撃をコントロールできなかった。プレスのラインを突破された時に困難が生じたが、es un problema fácil de solucionar. Bajar un poco el bloque puede ser una solución/エス・ウン・プロブレマ・ファシル・デ・ソルシオナル。バハール・ウン・ポコ・エル・ブロケ・プエデ・セル・ウナ・ソルシオン(それは簡単に解決できる問題だ。ブロックを少し下げるというのが解決策かもしれない)」と、あまり心配していなかったみたいですけどね。

ただ、「defensivamente el equipo no está acostumbrado a defender con el rombo/デフェンシバメンテ・エル・エキポ・ノー・エスタ・アコストクンブラードー・ア・デフェンデール・コン・エル・ロンボ(守備的にチームは中盤ひし形の陣形で守るのに慣れていない)」とも言っていたので、入団早々に不動のトップ下に置かれたベリンガムのポジションが変わることもあるかと。これで4試合のアメリカツアーを2勝2敗で終えたマドリーはオーランドをその晩のうちに発ち、木曜にはマドリッドに到着。日曜からは、ベルデベバス(バラハス空港の近く)に残ってケガのリハビリをしていたセバージョス、ヒザの半月板のヒビでツアーから途中で引き揚げたギュレルもチームメートとマドリー練習場で顔を合わすことになるため、もう淋しくないかと。きっと来週は腰を落ち着けて、どの選手もシュート練習に励んでくれるんじゃないでしょうか。

そしてお隣さんのユベントス戦が終わりかける頃、メキシコのモンテレイでレアル・ソシエダ戦に挑んだのがアトレティコだったんですが、どうも遥々ソウルから移動したせいでの時差呆けが残っていたようで、うーん、大体、韓国でもそうだったんですが、着いた翌日にダブルセッションして、選手たちを疲れさせる必要があるのかどうか。開始2分にモラタがvaselina(バセリーナ/ループシュート)をGKラミロに防がれてしまったのも幸先が悪かったんですが、久保建英選手が先発したソシエダも攻撃が振るわなかったため、前半は0-0で終わることに。

この日のシメオネ監督はKリーグ選抜チーム戦同様、後半頭から11人全員を代えたんですが、サムエル・リノやマルコス・ジョレンテに絶好機があったものの、得点には至らず。それでも32分にはソシエダの選手のハンドでPKをもらったため、メンフィス・デパイがいそいそとキッカーに立ったところ…どうしたら、あそこまでヘナチョコなパネンカ(緩いボールをGKの正面に蹴るPK)が蹴れるんでしょう!GKラミロと代わったカンテラーノのマレロなんて、一歩も動かずに楽々キャッチしていましたが、結局、試合は0-0のままでタイムアップ。選手たちは今季のCL出場チーム同士の対戦を楽しみにしていた観客のpito(ピト/ブーイング)を浴びて、すごすごピッチを引き揚げる破目になりましたっけ。

いえ、これには一応、シメオネ監督が「Veníamos de 14 horas de vuelo, mucho calor, cambio horario…/ベニアモス・デ・カトルセ・オラス・デ・ブエロ、ムーチョ・カロール、カンビオ・オラリオ(ウチは14時間のフライトをして、凄い暑さだし、時差呆けもある…)。誰も気にかけないが、プレーする選手たちには影響する」と言い訳していたんですけどね。実際、同日、グアダラハラで行われたリーガ・アメリカツアーの仲間、ベティスとセビージャもエン・ネシリが後半ロスタイムに1点を挙げただけのスコアの淋しい試合だったとはいえ、当分、暑いのはリーガが開幕してからも同じですからね。おそらく日曜午前4時(日本時間午前11時)から、今度はサン・フランシスコに河岸を変えて、オラクルパークでプレーするセビージャ戦では選手たちも先日、ソウルでマンチェスター・シティを撃破した時の調子を取り戻してくれると思いますが、さて。

ちなみにモンテレイでの練習でようやく筋肉痛から回復、チーム練習に加わっていたジョアン・フェリックスはこのソシエダ戦ではプレーしておらず、セビージャ戦で出るのかもわからず。移籍先探しの方も進展がまったくないため、当人もそろそろ焦っていそうですが、そうそう、レガネスにレンタル移籍する予定で韓国からマドリッドに直帰したカンテラーノのカルロス・マルティンは木曜には気が変わり、同じ2部のミランデスで1年修行した後、1部チームへのレンタルを勝ち取り、今はアトレティコのトップチームに残ることをシメオネ監督から切望されているリケルメ(昨季はジローナでプレー)をトレースすることに決めたよう。

何せ、アトレティコのリーガ開幕戦は週末明けの14日、月曜のグラナダ戦になりますからね。日曜にアメリカ興行を終えて、マドリッドに戻ってもマハダオンダ(マドリッド近郊)の練習場でじっくり調整する時間があるのはいいんですが、ツアー出発直前に脛骨にヒビが入り、マドリッドでお留守番しているヒメネスはそれまでに回復しないよう。まあ、昨季から彼はしょっちゅう負傷で不在となるため、アスピリクエタ(チェルシーと契約解除)やソユンチュ(レスターシティと契約終了)、モウリーニョ(ラシンクラブ・デ・モンテビデオから移籍)らをこの夏、獲ったという事情がありますからね。まだ復帰時期がはっきりしない同じ留守番組、ふくらはぎを痛めたモリーナを含めて、開幕戦に間に合わなくても大丈夫なんですが…これ以上はケガ人は増やさないで無事に帰国してほしいものです。


【マドリッド通信員】 原ゆみこ

南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。

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