<レスリング>【2023年インターハイ・特集】“決着戦”をフォールで制す! 勝因は「強い気持ち」…女子68kg級・星野レイ(東京・日体大桜華)

 

 3年連続で同じ顔合わせとなった2023年インターハイ女子68kg級決勝は、昨年優勝の星野レイ(東京・日体大桜華)がワンチャンスを逃さずに北出桃子(愛知・至学館)にフォール勝ち。2年連続優勝を達成し、10日前にあったU20アジア選手権チャンピオンの実力を示した。

▲1勝1敗のあとの“決着戦”で勝ち、笑顔の星野レイ(東京・日体大桜華)=撮影・成國琴音

 試合終了直後は、北出が肩を痛めたのか、なかなか立ち上がることができなかった。その様子を見た星野は北出のもとに駆け寄り、立ち上がることを手助け、相手を気遣う思いやりを見せた。「3年続けて決勝戦を闘えたことはうれしい。今後も闘うことがあると思いますので、そのときはまた、一緒に頑張りたいと思います」。力の限りをぶつけ合ったライバルだが、試合が終われば、お互いの実力をアップさせた最高の相手だった。

 試合内容は、最初に脚を取られ、テークダウンされそうになるピンチを迎えた。「絶対に取らせない」という気持ちが、ぎりぎりのところでしのぐことにつながった。「練習でも、足を取られてしまうことが多いです。インターハイ前から、そういうときでもこらえることを意識して練習してきました。それが生かされましたね」と振り返った。

 しのいだあとは、うまい身のこなしで反撃し、一気にフォールの体勢へ。強い相手ということを知っていただけに、そのチャンスは逃してはならないと思い、攻撃を続けた。「自分の得意技ですので」と言う。

▲開始早々、右脚を取られて厳しい体勢になった星野だが…

今後の目標は「人間性を磨くこと」―

 一昨年の“1年生対決”のときは3点を先制され、追い上げたが2-3の黒星。昨年の再戦では、先制し、一時は追いつかれたすぐに突き放し、最後は9-3での勝利だった。リベンジしたとはいえ、次の勝利を保証してくれないのが勝負の世界。「相手はどんなふうに強くなっているかな」「研究されているんじゃないかな」と、不安は消えなかったという。

 しかし、試合では「それを上回るだけの強い気持ちで臨みました」ときっぱり。昨年からの1年間に、全日本選手権で闘い(2021年世界2位の宮道りんに黒星)、「クリッパン女子国際大会」(スウェーデン)でシニアの国際大会に出場(3位)、U20アジア選手権で優勝と貴重な経験をしており、経験の差がそのまま結果に表れた形となった。

 上の世代の選手と闘うことで、「まだまだ」という気持ちを持つことになり、それが向上心へとつながっているようだ。

▲試合が終わればノーサイド! 肩を痛めた北出を気遣った星野

 今後の目標を聞かれて、まず出てきたのが「人間性を磨くこと」。強いだけでは駄目との思いがあればこその言葉だろう。マット上での目標を問われ、「8月のU20世界選手権での優勝」を直近の目標に挙げた。U20アジアで優勝したとはいえ、欧州の選手は「手足が長く、最後まで攻めないと返されてしまうと思います」と警戒。対策を十分にたてて臨むつもりだ。

 来年以降の目標は「2028年のオリンピックで優勝すること」だ。卒業後は、世界トップ選手だった松永共広コーチ(2008年北京オリンピック2位)が指導し、72kg級でアジア選手権2位の新倉すみれのいる神奈川大を受験することを決めており、視線はすでに世界へ向いている。

 「いい結果を(大学に)報告できることになって、よかったです。U20世界選手権のあとにも、まだ全日本女子オープン選手権(10月)、全日本選手権と続きます。いい成績を残して進学したい」。きっぱりと言い切った。

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