<レスリング>U17世界選手権(トルコ)出場の男子グレコローマン・チームが帰国

 

 トルコ・イスタンブールで行われているU17世界選手権に出場した男子グレコローマン・チームが8月4日、羽田空港に帰国した。80kg級の吉田泰造(香川・高松北高)が5試合を勝ち抜いて優勝。男子日本選手としては2017年以来、6年ぶりの優勝を達成した。

▲金メダルを持って帰国した吉田泰造(香川・高松北高)

 吉田は、出発前から今大会の目標を「優勝」に置いていたと胸を張る。日本代表ともなれば、だれもが優勝を目標にして出場するだろうが、現実を考えた場合、本音は「最低でも表彰台」などが普通ではないか。吉田は昨年の経験(3回戦でイランに敗れて8位)から、「世界のレベルが分かった。本気に思っていました」と言う。

 昨年の大きな敗因は、通常体重が76kgくらいで、まったくパワーが足りていなかったこと。それから1年間、パワーアップを主眼に置いた練習を積み、外国選手と対等に闘える体重とパワーを身につけ、それが大きかったと振り返った。「マットに上がったら緊張することもなく、(チームメートの)応援を受けて自分の闘いができました」と言う。

 準決勝までの4試合連続テクニカルフォール勝ちは、ほとんどがスタンドからの得点。スタンドで外国選手と互角以上に闘うことができ、日本選手の負けパターンとも言える「パッシブを取られて、グラウンドで失点」がなかったことが挙げられる。

 グレコローマン重量級での快挙という、日本レスリング界の歴史の曲がり角になるそうな優勝については、「試合前はまったく意識していませんでした。聞かされて、すごいことなのかな、と思いました」と笑った。

 ただ、「U17での優勝にすぎません」とも話し、これが終着点ではないことも強調。「U20、U23、シニアでも勝てるよう強化していき、最終的にはオリンピックで金メダルを取りたいです」と気を引き締めた。

▲トルコから帰国した男子グレコローマン・チーム

 古里光司監督(神奈川・磯子工高教)は、優勝した吉田について、小学生の頃に相撲もやっていて足腰が強く、外国選手の押しに負けない体力がよかったことと、場外際の身のこなしがすばらしかったと言う。スタンドで押し負けないのでグラウンドの防御になることは少なかったが、決勝のロシア戦は2度あったそうだ。しかし、そこを守る強さがあり、「技術もすばらしいものを持っている」と言う。

 今回は、吉田以外に上位入賞者はいなかったが、「遠征前に2日間の合宿練習をやり、どの選手も高いレベルを持っていると感じました。ただ。試合になると欧州の選手と経験値が違いました。そのあたりが、今後の課題になるでしょう」と、日本グレコローマンの課題に言及。経験を積むことで、もっといい成績を出せると断言する。

 園部竜也コーチ(福井・若狭東高教)は、日体大時代の2010年に全日本大学グレコローマン選手権2位の実績を持っている指導者。「当時でも国際舞台で闘える選手はいましたが、世界となると厳しいのが現実でした。吉田の優勝によって、日本の重量級の選手でも世界と対等に闘える力があることが分かり、日本にとって大きな収穫ですね」と話す。「全体的に技術面は劣っていなかったと思います。問題はフィジカル面」と分析した。

 日本代表チームの遠征に同行するのは初めて。外国選手のレベル、外国チームのウォーミングアップ方法やコーチの指導方法などを見ることができ、指導者としても「プラスになることが多かった遠征でした」と振り返った。

 

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