来夏、金沢に国宝ずらり 石川県立美術館で奈良国立博物館展

国宝「絹本著色十一面観音像」平安時代(奈良国立博物館蔵)

  ●「ポスト国文祭」の目玉に 本社など実行委

 奈良国立博物館が所蔵する至高の仏教美術約200点が来年夏、金沢市の石川県立美術館に集結する。仏教絵画を代表する国宝「十一面観音像」といった仏像、仏画など国宝、重要文化財は100点近くに上る。主要展示をほぼ網羅する大規模展の開催は石川が初めて。「文化観光」を推進する県は、北陸新幹線県内全線開業後の「ポスト国民文化祭」の目玉として誘客につなげる。

 「奈良国立博物館展」(仮称)は、県や北國新聞社でつくる実行委員会が主催する。県内に100点近くの国宝、重文が集まる例は過去にない。展覧会は文化庁長官、独立行政法人国立美術館理事長を歴任した青柳正規県立美術館長の働きかけで実現した。

 「仏教美術の殿堂」と称される奈良博が所蔵する国宝13点から7点、重文は80点以上が出展され、展示品のほぼ半数が国指定文化財となる。

 国宝「十一面観音像」は奈良・法隆寺の鎮守(ちんじゅ)に伝わり、豊麗な彩色を誇る名品。このほか鬼と戦う神々を描いた「辟邪絵(へきじゃえ)」や、奈良時代の写経「金光明最勝王(さいしょうおう)経」などが展示される。

 重要文化財からは平安時代前期にさかのぼる「如意輪(にょいりん)観音坐像」や、浄土真宗の開祖「親鸞聖人像」などがそろい、日本仏教美術の1400年の歴史をたどる。

 会期は来年7~8月の夏休み期間で、幅広い年齢層に向けた分かりやすい作品解説も見どころとなる。

 県は、北陸新幹線敦賀延伸で時間的距離が短縮された北陸3県を核に県内外からの集客を見込み、来年10月の大型宣伝事業「北陸ディスティネーションキャンペーン」につなげる。

 ★絹本著色十一面観音像(けんぽんちゃくしょくじゅういちめんかんのんぞう) 平安時代に十一面観音を絹に彩色して描いた現存最古の作。縦169センチ、横90センチ。左手に水瓶を持ち、蓮華座に座る観音像の着衣には精緻な截金が施され、平安仏画らしい優美な姿を表わしている。法隆寺鎮守、龍田新宮の境内にあった伝灯寺に伝来し、後に法起寺の所蔵となった。

重文「木造如意輪観音坐像」平安時代(奈良国立博物館蔵)

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