<金口木舌>「カーヌン」の教訓

 知人からジャックフルーツを振る舞われたことがある。インド原産でパラミツとも呼ばれる。ドリアンによく似た果実は、味よりも切った際に出てきた接着剤のようなねばねばが記憶に残る

▼名前のせいというわけではないが、いつまで居座るのだろうと、その粘っこさにうんざりする。県内で大きな被害を出している台風6号、アジア名はタイの言葉でジャックフルーツを意味する「カーヌン」だ。もちろん、果物に罪はない

▼1日から3日にかけて沖縄本島や先島などを暴風域に巻き込み、2人の尊い人命が失われた。家屋や車の損壊、停電とそれに伴う断水など、被害は広範囲にわたり深刻だ

▼台風は進路を東に変えて、4日以降は沖縄に再接近してきた。大きさはもちろん、時速10キロ程度というのろのろ台風。過去の例を見ても被害が大きくなる傾向がある。決して気を緩められない

▼台風のアジア名は繰り返し使われるが、大災害を出した台風名は使われなくなる。カーヌンとは二度と会わないかもしれないが、災害の記憶と教訓は忘れずにいたい。

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