依存症と「幸せホルモン」の関係とは?何らかの行動をして快感を得ると正常な判断ができなくなることも【図解 依存症の話】

ドーパミンを求めて暴走する脳

「幸せホルモン」「やる気のもと」とも呼ばれているドーパミンは、快感や多幸感をもたらしてモチベーションを向上させる神経伝達物質です。ドーパミンは、何かを達成したときや欲求を満たす行動をしたときに、脳の腹側被蓋野(ふくそくひがいや)にある神経細胞から分泌されます。すると、脳の「報酬系」と呼ばれる神経系が活性化。その影響は情動を司る「扁桃体」に伝わり、快感や高揚感といった報酬をもたらします。大脳辺縁系(だいのうへんえんけい)はこれを「欲求を満たす行動」として記憶します。

例えば、努力して仕事や勉強で成果を上げ、周りの人から褒められると、脳の報酬系ではドーパミンが増えてうれしい気持ちになります。すると脳は、仕事や勉強に励むことは快楽をもたらすと記憶して、ますます努力するようになります。ドーパミンは、この他に運動調節に関連する機能もあり、欠かすことのできない物質です。アルコールや薬物には報酬系を活性化させる作用があります。また、ギャンブルの大当たりやゲームによる達成感でも、多量のドーパミンが放出
されます。これらは依存性のある物質や行為と快感が結び付くため、繰り返し行うと脳の働きが変化し、やがて正常な判断ができなくなります。これがP.16で紹介した感情や本能を司る脳 (サルの脳)が暴走している状態。依存症はドーパミンによる脳の報酬系の異常によって発症するのです。

快感をもたらすドーパミン

ドーパミンが放出されると、「楽しい」「うれしい」という気持ちになってモチベーションが向上し、 ポジティブで意欲的に。

大脳辺縁系(だいのうへんえんけい)

本能や感情、記憶、自律神経に関わる。

扁桃体(へんとうたい)

情動と感情の処理やストレス反応に関与。

腹側被蓋野(ふくそくひがいや)

ドーパミンを放出する神経細胞が集中。

脳の報酬系に作用するドーパミン

報酬系とは人に喜びや心地よさをもたらす回路。ドーパミンが放出された行動は記憶され、モチベーションのもとになる。

「依存=行動」をコントロールできなくなるメカニズム

依存を引き起こす物質や行動によっても報酬系が興奮して快楽を感じるため、繰り返していると理性ではコントロールできなくなります。

出典:『短時間でしっかりわかる 図解 依存症の話』大石 雅之

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【書誌情報】
『短時間でしっかりわかる 図解 依存症の話』
大石 雅之 著

特定の物質や行動をやめたくてもやめられない病の「依存症」。スマートフォンの普及や時代の変化にともない、依存症の種類も多様化しました。「スマホ依存」「ゲーム障害」などの言葉は、テレビやインターネットのニュースで目にする機会も増え、社会問題として注目されています。依存症は一度症状が出てしまうと完治が難しい病気です。本書はその依存症について具体例を交えながら、依存する人としない人の違いや依存症の進行の仕方、依存症が起こるメカニズムなどを、メンタルマネジメントや環境、生活習慣の観点から図解でわかりやすく解説。

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