3年生、夏物語2023 野球 先発完投は投手の醍醐味と示した大分 【大分県】

第105回全国高校野球選手権大分大会

7月24日 別大興産スタジアム

準決勝

大分商業 100 001 010|3

大 分 000 000 000|0

2016年以来の夏の甲子園出場を目指した大分だったが、準決勝で大分商業に敗れた。ただ、初戦の2回戦から準々決勝までの3試合で石丸諒(3年)が2試合、庄諒馬(同)が1試合で完投した。先発、中継ぎ、抑えの投手分業制が当たり前の時代に、「誰にもマウンドは譲りたくない」(石丸)、「9回を投げてこそピッチャー」(庄)と先発完投型にこだわり、大きなインパクトを残した。

背番号1を背負った鷲頭翔(同)は準決勝の4回途中から、今大会初のマウンドに立った。腰のけがにより万全な状態でなかったのは残念だったが、鷲頭を含めると、完投能力のある投手を3人も擁していた。昨年秋から就任した広瀬茂監督は「1試合を投げ切ってこそ投手」との考えを伝え、外部トレーナーの専門トレーニングを取り入れ、冬場は体力強化に専念させた。春先からは3投手が競うように練習試合で結果を出したことで、「完投することが当たり前」という雰囲気が、投手力の底上げにつながった。

準決勝で登板した鷲頭翔

夏の大会では、「先発は立候補制」だったと明かした広瀬監督。「自信がない奴に先発マウンドは託せない。投手は俺がやってやるぞという気持ちが必要。そして、最後まで投げ抜くという覚悟が大事」と自ら手を挙げる投手を待った。もちろんブルペンでの調子を確認し、捕手の橋迫凌空(3年)の意見を取り入れながら決断するのだが、先発を志願した投手には「お前が先発なのは当たり前だろ。エースなんだから」と送り出す。

エースと呼ばれて気を悪くする投手はいない。こそばゆいものはあったかもしれないが、石丸は「マウンドに立てば自分が主役と思わせてくれた。自信を持って投げることができた」と話す。橋迫も「投手に気持ちよく投げさせるのが捕手の役割」との監督の意向をくみ取り、それぞれの投手の性格に合わせて配球を組み立て、リードした。

今の時代、完投不要論はあるが、先発完投は投手の醍醐味だと思わせた大分の投手は輝いていた。

(柚野真也)

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