投資信託の【目論見書】で初心者が見るべきポイントとは?金融アナリストが教える活用法

投資信託の目論見書と聞くと、「読むのは難しい」「ちょっと面倒くさい……」と思われていませんか? 実は目論見書は、投資信託に苦手意識を感じている方の、心理的ハードルを無くすカギを握っているかもしれません。

今回は、投資信託の目論見書の必要性や見方についてお伝えします。


目論見書とは

目論見書は、投資信託を提供する金融機関が発行する、投資家に対して商品の内容やリスクを説明した重要な書類で、投資判断に必要な重要事項が説明されています。簡単に言うと、投資対象の取扱説明書のようなものです。

株式や社債を含む有価証券の発行者は、金融商品取引法で目論見書の作成が義務付けられており、投資信託の場合は販売会社を通して購入する前に、必ず投資家に交付されるか、もしくは電子交付により受取れます。

目論見書には、先ほど投資信託説明書と例えた「交付目論見書」と、「請求目論見書」の2種類があります。

交付目論見書はファンドの目的や基本的な性格、各種リスクや投資方針、投資対象、運用実績や手数料という、投資信託の基本的かつ知っておかねばならない情報が全て記載されているものです。請求目論見書はファンドの沿革、経理状況などのより詳細情報が記載されたものであり、名前の通り投資家から請求があった場合に、交付する義務がある目論見書です。

まず交付目論見書に重要な事項がまとめて記載されていますので、購入の前に必ずチェックしましょう。交付目論見書でわからないことがあったり、より詳しく知りたい際は、請求目論見書にも目を通す方が良いでしょう。

目論見書を詳しくみてみよう

目論見書では、以下のようなことが記載されています。

(1)投資信託の概要
投資信託の名称や運用会社の情報、運用開始日、信託財産総額などの基本情報が記載されています。

(2)運用方針
投資信託がどのような資産に投資し、どのような投資戦略で運用するかについて、詳細が述べられています。

(3)リスクファクター
投資信託にはリスクが付きものです。目論見書では、さまざまなリスク要因(市場リスク、信用リスク、流動性リスクなど)について警告があります。

(4)過去の実績
過去の収益やリターンの推移、ベンチマークとの比較など、過去の実績についてのデータが掲載されています。

(5)費用
投資信託を運用するにあたっての、コストや手数料について明記されています。これらの費用は、投資リターンに影響を与える重要な要素です。

(6)税金に関する情報
投資信託から得られる利益に対する税金の取り扱いについて、説明があります。

(7)その他の情報
投資信託の解約や運用の中止に関する条件、投資家の権利と義務などが記載されています。

目論見書の実例

それでは実際に、人気の投資信託である「eMAXIS Slim 米国株式(S&P 500)」を例に、目論見書を見てみましょう。

画像:三菱UFJ国際投信「eMAXIS Slim 米国株式(S&P 500)投資信託説明書(交付目論見書)」より引用

表紙では商品分類として、単位型か追加型かという項目があります。単位型は設定当初の募集期間中にしか購入できず、信託期限も予め決められています。追加型は設定後も売買可能で信託期限も期限がないものが多く、あっても期限が長期間に渡ったり延長していくものが多くなっています。

近年の投資信託の主流は追加型で、同商品も追加型です。また同商品の投資対象地域は海外で、投資対象資産 (収益の源泉)は株式、補足分類はインデックス型となっています。加えて属性区分の為替ヘッジは、対円での為替リスクに対するヘッジの有無を記載していますが、同商品の場合は「なし」となっていることが読み取れます。

続いて、中のページも見ていきましょう。

1ページ目には、投資信託の目的・特色について書かれています。同商品の目的は、S&P 500指数(配当込み、円換算ベース)の値動きに連動する投資成果を目指すこと、特色はS&P 500指数(配当込み、円換算ベース)に連動する投資成果をめざして運用を行うこと、S&P 500指数(配当込み、円換算ベース)をベンチマークとしていること、ファンドの1口当たりの純資産額の変動率を対象インデックスの変動率に一致させるこ とを目的とした運用を行うことが伝えられており、主として対象インデックスに採用されている米国の株式に投資を行うことや、原則として為替ヘッジは行わないという、投資信託の購入を比較検討するうえで不可欠な情報が記載されています。

2ページ目は、ファンドの仕組みとして運用が主に「S&P 500インデックスマザーファンド」への投資を通じ、米国の株式に投資する「ファミリーファンド方式」により行うことや、主な投資制限、分配方針について紹介されています。

3・4ページ目では投資のリスクについてや、基準価額の変動要因や留意点など、5ページ目では運用実績について、基準価額・純資産の推移や純資産総額、主要な資産の状況など。6〜8ページ目では、手続・手数料等として、購入単位や購入価額(購入申込受付日の翌営業日の基準価額)のほか、ファンドの費用・税金のことが記載されています。

目論見書の活用法

投資初心者でも理解しやすいように、目論見書の活用法について以下のポイントを考慮してみましょう。

(1)重要な項目をおさえる
目論見書は多くの情報が詰まっていますが、初心者の場合は最初に運用方針とリスクファクターを把握することが重要です。投資信託がどのような資産に投資するのか、リスクはどのような要因からくるのかを理解しましょう。

(2)グラフや図を見る
目論見書には数値データが多く含まれていますが、グラフや図を見ることで、数字だけでは理解しづらい情報も分かりやすくなります。過去の実績の推移をグラフで示す場合などがありますので、それらをチェックしましょう。

(3)質問する
目論見書を読んで疑問点や理解しづらい項目があれば、運用会社や投資家のサポート窓口に質問することを躊躇しないでください。投資にはリスクが伴うため、理解が不十分なまま投資することは避けるべきです。投資初心者の方には、「わからないこと質問してもいいんですか?」と驚かれることもありますが、目論見書に質問先なども書かれているので、質問の受け皿がしっかりとあることを理解しておいてください。

(4)複数の投資信託を比較する
目論見書を読むことで、異なる投資信託の間で比較することができます。類似の目論見書を複数読み、投資信託の特徴やリスク、費用などを比較して、自分に合った商品を見つけることができます。

(5)投資目標に合わせて選ぶ
自分の投資目標や、リスク許容度に合った投資信託を選ぶことが大切です。リターン重視なのか、リスクをおさえたいのか、長期的な運用なのか短期的な運用なのかを考慮して、目論見書を読む上での判断材料として活用しましょう。


目論見書は、投資信託に投資する際に欠かせない重要な情報源のため、目論見書に含まれる主要な情報とその読み方を把握することが大切です。自分の投資目標に合った投資信託を選び、リスクを理解した上で賢い投資を行いましょう。

投資には常にリスクが伴うことを忘れず、資産を守りながら賢く運用するために、目論見書も活用しながら、将来の資産形成に向けて取り組んでください。

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