「カルチャーを作りたい」人生を豊かにしたヒーローたちとの出会い/“Apple Tree Gang”を名乗る男たち【前編】

米国のゴルフの始祖が“Apple Tree Gang(アップルツリーギャング)”と呼ばれていたという時代から130年あまりを経た今、新たにギャングを名乗る男たちがいる。大阪のセレクトショップ「CLUBHAUS(クラブハウス)」の代表・松本抵三氏と、ゴルフアパレル「HEAD TO TOE(ヘッドトゥトウ)」のディレクター・平野淳氏だ。

ともにゴルフアパレルを生業とし、ブランドコラボレーション商品の展開や、オリジナルアパレルを製作。SNSでコアなファンを獲得し、新鋭ブランドでありながら、発売商品が瞬く間に完売するなど、ゴルフアパレル市場に新たなストリートカルチャーの風を吹き込ませている。

そんな彼らが、ゴルフへのリスペクトと自分たちのライフスタイルを融合した新しいゴルフを追求するために立ち上がった。二人が中心となって刊行した「Apple Tree Gang」はゴルフを愛し、さまざまな分野で活躍するヒーローたちにフォーカスし、ゴルフの楽しみ方や、メッセージを伝えているフリーペーパー。

総合格闘家の宇野薫氏や、「BEAMS GOLF」「NEW VINTAGE GOLF」を立ち上げた西脇哲氏ら、7月にリリースされた第3刊では、名古屋に店舗を構えるサーフショップ「PIPPEN STORE(ピッペンストア)」オーナーのピッペン氏、モデルのパトリシオ氏らが紙面を飾っている。そしてこの度、初のリアルイベントも開催した。インタビュー前編では、世の中に伝えたい彼らの思いを聞いた。(敬称略)

―二人の出会いとゴルフ歴は?

平野:共通の友人が多くいたりして、10年以上も前から互いに知る存在ではあったけど、当初は挨拶を交わす程度の仲でしたね。こんなに仲良くなったのはいつだったかなぁ…。僕はゴルフを始めて6年目です。

松本:たしか5年くらい前、ゴルフをきっかけに再会したんですよ。それから一気に距離が縮まって、多くいる仲間の中でもいちばん一緒にゴルフに行っているかな。僕はゴルフを41歳の時に始めたので、今年で12年目になります。

―2021年5月に「Apple Tree Gang」第1号を発刊。きっかけを教えてください。

松本:元々は、いろんなジャンルのヒーローたちがゴルフを始めているよ、ということを伝えることによって、ゴルフが注目されるのではないか?と考えたことです。3年前の構想の時にはまだ、ゴルフへの温度感は今とは違っていて、「ちょっとダサいな」というイメージがまだまだあった時期。それを取り除くには、「こういう人たちが(ゴルフを)やっている」ということをアピールするのが効果的なのではないか、と思ったことがきっかけでしたね。

平野:僕はランニングチームを作って10年。メンバーとともにランニングカルチャーみたいなことを一緒にやってきて、コロナ禍で行動制限が敷かれるなかで、活動を伝えにくくなってしまったんです。でもゴルフだけはなぜかポジティブに感じていました。みんなで集まる機会も減った中で、ゴルフなら集まれるみたいな。そんなこともあって、僕はゴルフにのめり込んだわけですが、抵さん(松本の愛称)と同じ思いがありました。

松本:僕からしたらデカジュン(平野の愛称)が、「AFE」という全国規模で支部を置くようなコミュニティを作っていることを知っていました。それがインスピレーションになって、ゴルフにもそういうのがあったら、もっとみんながつながって楽しめるのになという思いがあったので、その道付けをしたいなと思ったんですよね。

僕らがようやく仲間とつながれるようになって、全国に友達ができた。この楽しみや喜びをみんなと共有したかったというのが、僕ら二人の共通の思いです。こんなに楽しくて、素晴らしい世界があることを、もっとみんなと共有したいなと。この歳になると新しい友達ってなかなかできないじゃないですか。それまでは新しい出会いは少なかったけど、何が良かったって(ゴルフを始めて)えらい勢いで友達が増えましたからね。

平野:ゴルフって人間性が出るじゃないですか。普段とは違う時間を過ごす中で、人を知っていく時間でもある。合う人とはとことん仲良くなって、つながれるのがすごく面白い。どこに行っても友達がいて、「ゴルフしようよ」「うまい店に連れていってあげるよ」で集まれる、そんな仲間ができたら楽しいじゃないですか。カッコつけなくていい、気持ちが通じる人たちと、楽しい時間を共有できたらいいなぁと。

――情報発信の手段としてウェブが主流の昨今、あえて紙を選んだ理由はなぜですか?

松本:ウェブは(ゴルフに)興味のある人しか集まらないと思ったんですよ。元々はゴルフ以外のジャンルの人たちに、ゴルフの面白さを知るきっかけになってほしいなぁという思いがあったので。紙なら、サーフィン、スケートボード、ランニングなどのショップに置いてもらえるというのが当初から発想にありました。意外かもしれませんが、ゴルフショップには一冊も置いていないんです。ほかにも、手に取れるのはレストラン、整骨院、定食屋さんとかね(笑)。

デカジュンが第2号を刊行する時に、「どうせ作るならカッコいいものにしましょう」って声を掛けてくれたんです。それがものすごくうれしかったんですよね。

―「Apple Tree Gang」を通して、届けたいメッセージとは?

松本:僕は最初ゴルフを毛嫌いしていて「絶対やるもんか!」って思っていたのに、やってみたら死ぬほど面白くて。イメージだけで門戸を閉ざしていた自分がもったいなかったと思ったんですよ。この活動がすべてとは思わないけど、新たにゴルフに興味を持った人も増えてきた一方で、やめてしまう人もいる。でもゴルフを知るきっかけにはなったと思うんだよね。僕自身はゴルフで人生が良い方向に大きく変わったので、そういう可能性を秘めていることを多くの人に知ってほしいなと。

みんなの生き方が良くなれば、世の中も良くなる。一助になるはずだと思っているんですよ。それくらいゴルフは素晴らしいスポーツ。みんながこれを知って、生き方を自問自答して、自分なりの答えを見つけてもらえたらうれしいですね。

STAFFスタッフ

Photo

Takao Ikemoto

Edit & Text

Junko Itoi

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