勝田貴元3番手、エバンスがデイ2首位。トヨタ勢は雨中のサバイバルで3台がトップ5入り/WRC第9戦

 8月4日(金)、WRC世界ラリー選手権第9戦『ラリー・フィンランド』のデイ2がユバスキュラのサービスパークを中心に行われ、TOYOTA GAZOO Racingワールドラリーチーム(TGR-WRT)のエルフィン・エバンス/スコット・マーティン組(トヨタGRヤリス・ラリー1)が総合首位に立った。また、勝田貴元/アーロン・ジョンストン組(トヨタGRヤリス・ラリー1)が総合3番手に、母国ラウンドにスポット参戦しているヤリ-マティ・ラトバラ/ユホ・ハンニネン組(トヨタGRヤリス・ラリー1)も総合5番手につけている。

 一方、競技2日目の中盤まで全体トップでラリーを牽引していたカッレ・ロバンペラ/ヨンネ・ハルットゥネン組(トヨタGRヤリス・ラリー1)は、午後のステージでコースオフ。母国ラリーを無念のリタイアで終えることとなった。

 前日、ユバスキュラ市街地でのスーパーSSで幕を開けた今季第9戦フィンランドは、4日(金)の朝から森林地帯での本格的なハイスピード・グラベル(未舗装路)ラリーがスタートした。SS2~10の計9ステージで争われたこの日は、断続的に降り続く雨の影響で路面が湿った状態でオープニングを迎えたが、昼前からは雨が強く降る場所もあり当該セクションでは水たまりができ路面は泥状になるなど、非常に難しいコンディションでの戦いとなった。

 ラリー初日に総合3番手につけたロバンペラは、今朝の2本目のステージとなったSS3から午後の2本目のSS7まで、5ステージ連続でベストタイムを記録。SS2で総合トップに浮上したのち少しずつ後続との差を拡げ、SS7終了時点で総合2番手のエバンスに対して5.7秒のリードを築いた。

 ところが、伝統的なステージである“ミヒンパー”の再走SS8でフィンランド人ペアを悲劇が襲う。ステージの終盤、ロバンペラが駆るトヨタGRヤリス・ラリー1は左コーナーに向けたブレーキング時に大きくスライドし側溝に転落。その際に側溝内の障害物に激しく激突、乗り上げるかたちとなりクルマが縦方向にロールしてしまった。

 幸いにもロバンペラとハルットゥネンに怪我はなかったものの、クルマのダメージは大きくデイリタイアを余儀なくされた。その後、トヨタチームは「週末の再出走は不可能」との通知を発している。

 ロバンペラの戦線離脱により、“現王者”と僅差の戦いを続けていたエバンスが総合トップに浮上することとなった。エバンスは金曜日にベストタイムこそ記録しなかったが、9ステージのうち、8つのステージで2番手タイムを刻むなど好調を保ち、総合2番手に順位を上げてきたティエリー・ヌービル(ヒョンデi20 Nラリー1)に6.9秒差をつけ、首位でデイ2を締めくくった。

 また、オープニングステージで今大会初のベストタイムを記録した勝田は、その後も2番手タイムを2回、3番手タイムを4回刻むなど、濡れて非常に難しいコンディションとなった超高速ステージで攻めの走りを続け、総合3番手に順位を上げている。2番手ヌービルとは9.5秒差、総合4番手のテーム・スニネン(ヒョンデi20 Nラリー1)とは12.4秒差だ。

エルフィン・エバンス/スコット・マーティン組(トヨタGRヤリス・ラリー1) 2023年WRC第9戦ラリー・フィンランド
ヤリ-マティ・ラトバラ(トヨタGRヤリス・ラリー1) 2023年WRC第9戦ラリー・フィンランド

■豊田会長が見たかった笑顔のラトバラ“選手”

 今大会で久々のWRC復帰を果たし、ドライバーとして2019年以来となる“母国戦”ラリー・フィンランド出場を実現させたラトバラは、ラリー1カーのドライビングを楽しみながら、安定した走りを続けて総合5番手につけている。

 そのラトバラに代わって今大会、チーム代表を務めている豊田章男TGR-WRT会長は「チームのみんながとてもいい仕事をしていると思います」と語った。

「ラリー・フィンランドを楽しんでいます。私はドライバーたちを応援するためにここにいますし、チームがハッピーであれば、チーム代表である私もハッピーです」と同氏。

「カッレ(・ロバンペラ)はホームラリーをとても楽しみにしていたので、あのようなことになってしまい本当に残念ですが、重要なのは彼とヨンネ(・ハルットゥネン)が無事だったということです。クルマが直り、明日彼らが再スタートできることを願っています(※編注:その後の検査で修復不可能との判断が下され、同ペアはリタイアとなった)」

「エルフィン(・エバンス)は素晴らしい力を発揮してラリーをリードしていますので、明日も引き続きいいパフォーマンスを発揮してくれることを期待しています。また、今日は(勝田)貴元も非常に速かったですが、彼は長年ユバスキュラに住んでいるので、地元の人たちが彼のことも応援してくれることを願っています」

「ヤリ-マティ(・ラトバラ)にとっては今回が通算210回目のWRCスタートとなり、笑顔で運転を楽しんでいましたが、それこそが私が見たかった姿です。ラリーはまだ2日残っていますが、すべてが順調ですし、チームのみんながとてもいい仕事をしていると思います」

 4日間で最長の一日となる『ラリー・フィンランド』のデイ3は、サービスパークの南西エリアが戦いの舞台となる。ステージは2001年大会以来、初めて使用される“ヴァスティラ”のほか、パイヤラ、ラプスラ、ヴェックラという伝統的なエリアで行われる計4ステージをミッドデイサービスを挟んで各2回走行する。SS11~18、計8本のステージ合計距離は160.68km。リエゾン(移動区間)を含めた一日の総走行距離は641.06kmだ。

SS8まで互いに一歩も引かないトップ争いを見せていた2台のトヨタGRヤリス・ラリー1。右がカッレ・ロバンペラ車、左はエルフィン・エバンスのマシンだ。
今大会に限りチーム代表代行を務めている豊田章男TGR-WRT会長(左)と、SS8でのアクシデントでリタイアとなったカッレ・ロバンペラ(右) 2023年WRC第9戦ラリー・フィンランド
ヤリ-マティ・ラトバラ/ユホ・ハンニネン組(トヨタGRヤリス・ラリー1) 2023年WRC第9戦ラリー・フィンランド

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