200人強姦撮影し2人殺害した男の逮捕劇 『警視庁捜査一課 ルーシー・ブラックマン事件』初登場【Netflixランキング】5位

Netflixドキュメンタリー『警視庁捜査一課 ルーシー・ブラックマン事件』独占配信中

「ルーシー事件」の記憶

2000年7月に神奈川県で起こった「ルーシー・ブラックマン事件」は多くの人が鮮明に記憶していることだろう。当時21歳だったイギリス人女性ルーシー・ブラックマンさんが無惨に殺害された「ルーシー事件」は、日本のみならず世界中に大きな衝撃を与えた。警察の威信をかけた大規模捜査の結果、三浦海岸で発見されたルーシーさんの遺体は陵辱され、さらにバラバラに切断されていたのだ。

捜査の末に逮捕されたのは当時48歳の会社員、織原城二。織原は後にオーストラリア出身のカリタ・リジウェイさんを殺害していたことも明らかになる。この日本性犯罪史上でも類を見ない残酷な事件は、遺族はもちろん友人や関係者の怒り・悲しみ、そして同様の被害を経験した人々のトラウマも呼び起こしただろう。

「犯人は人を人と思っていない」「あんな卑劣な人間がいるなんて」

Netflix『警視庁捜査一課 ルーシー・ブラックマン事件』は、現在ほど外国人観光客が訪日してはいなかった23年前の日本、神奈川で起こった凄惨な事件を改めて見つめ直すドキュメンタリーだ。当時はバリバリの現役だったであろう刑事たちは今では老成しているが、彼らの中でも事件・捜査の記憶は一切風化していないように見受けられる。

かたや週刊文春の元敏腕記者や外国人記者、フリージャーナリストらの証言は外側から事件を見つめていて、警察関係者の述懐とはまた異なる重みがある。「事件化していなければ動けない」ことは報道だけでなく警察側も感じているジレンマであり、どんな世界にも共通する永遠の矛盾と課題だ。

定められた手順を踏むことが尊ばれる日本の警察、遅々として進まない捜査に対する遺族のストレス……。しかし容疑者の確保とルーシーさんの保護に執念を燃やす刑事たちもいて、組織内の不文律を破った捜査によって、じりじりと容疑者を追い詰めていった様子が伝わってくる。

別荘に連れ込み、薬物で昏睡させ強姦…被害者は200人以上

ルーシーさん失踪から100日が過ぎた頃、不動産管理会社を経営していた織原城二という男が別件で逮捕される。住まいであった元赤坂の高級マンションからは、織原による女性たちへの蛮行を映したビデオテープが大量に押収された。だが、入念な取り調べにも頑として犯行を認めず、事件と直接つながる証拠も出てこない中、織原は弁護士を雇い守りを固めていく。

かつて織原に撮影された被害者女性たちに協力・証言を求めるという辛い戦いが続く中、織原が別荘に連れ込んだ相手を昏睡させるために使用していた薬物の後遺症によって、後に死亡していたオーストラリア人女性がいたことが発覚。それでも“無関係”を主張する織原を落とすことはかなわず、捜査は暗礁に乗り上げたように思えた。

しかし、織原が大量に残していた“領収書”を時系列に沿って調べていくと、ルーシーさんと接触してから数日間の行動が鮮明に浮かび上がってくる。それは彼女の“死”を確証するに足るものでもあった……。

最終的に東京高等裁判所は、織原をルーシーさん殺害(強姦致死)の罪に問うことはできたのか? なんとも的を射ない裁判の顛末は、本編の終盤で確認してほしい。

再現映像を挟みながらも、ドラマチックな演出は廃したこのドキュメンタリーは、捜査関係者の「夢を抱いて日本に来て、なぜこんな理不尽な目に遭わなければならないのか」という憤り、やり場のない遺族の悲しみに満ちている。レイプドラッグの類を使用した性犯罪が絶えない日本は、まだこの事件を教訓にできていないのだろうか。

Netflixドキュメンタリー『警視庁捜査一課 ルーシー・ブラックマン事件』独占配信中

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