B級映画の宝石箱! アサイラム25周年作品 『マルチバース・アルマゲドン』エイリアンも地球の映画をサブスク視聴?

『マルチバース・アルマゲドン』© 2022 Acme Holding Company, LLC.

アサイラム流マルチバース作品?

ここ数年「マルチバースもの」への注目が集まっている。

多元宇宙設定がシリーズ全体にガッツリ関わっている、MCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)のスーパーヒーローものなどは特に有名だろう。樋口真嗣・庵野秀明両氏の新作ウルトラマン映画として話題を呼んだ、『シン・ウルトラマン』作中にも、マルチバースへの言及が見受けられる。直近ではDCスーパーヒーロー映画の『ザ・フラッシュ』が、まさにそのマルチバース展開を扱ったばかりだ。

そしてアサイラム社からも、“マルチバース”の名を冠する作品がリリースされた。なんと、これまでのアサイラム映画キャラクターたちがまさかの再登場を果たす怪作、『マルチバース・アルマゲドン』(2022年/原題:『2025 ARMAGEDDON』)である。

ちょっとしたお祭り映画感が漂う本作には、サメ・ワニ・タコ・ヘビその他諸々が人型に融合・合体した、究極の低予算映画モンスター<シン・アサイラムバース巨人(仮)>まで登場。いつにも増して目が離せない内容となっている。

というわけで今回は、ある意味アサイラム映画の決定版、『マルチバース・アルマゲドン』を紹介していこう。

――ちなみに本作、厳密にはマルチバースものではない

舞台は「アサイラムが動画サブスクを制覇」した異常な世界

アメリカでは、かの悪名高き映画スタジオ<アサイラム社>の映像作品群が、「配信サービスの視聴者数ランキングトップをほぼ独占する」という異常事態に見舞われていた。

同じ頃、巨大なピラニアやサメ、ワニ、ヘビやロボットなどが、世界各地に突如として出現。まるでアサイラム映画のように、破壊活動を開始する。

謎が謎を呼ぶ一連の騒動。実は地球侵略を企むエイリアンが、アサイラム映画を複数回視聴していた上、作中に登場するモンスターを超科学技術で実体化させることで、強力無比な尖兵として軍事利用していたのだ。

このままでは地球が低予算映画の手に落ちてしまう。果たして人類はエイリアンに、そしてアサイラム映画に勝つことはできるのだろうか……というのが本作の概要である。

アサイラム映画マニア感涙? 懐かしキャラが一堂に集結

まず冒頭、「幼い主人公姉妹が、おばあちゃんからアサイラム映画『スネークトレイン』をプレゼントとして与えられ、その内容に大盛り上がりする」というシーンが、すでに自虐的で面白い(『スネークトレイン』は『スネーク・フライト』というパニック映画の低予算パチモン作品。決して少女に買い与えるような映画ではない)。

その後もメガ・ピラニアやメガ・シャーク、クロコザウルスに、『ズーンビ』のアニマル・ゾンビー軍団など、懐かしのアサイラム映画キャラクターたちが一堂に集結。年季の入ったアサイラム映画マニアにはたまらない作りだろう。

ただ、過去作のモンスターを再登場させるのみならず、「複数個体が登場し群れをなす」シックスヘッド・ジョーズや、「原作からしてロボット兵器なので、乗り込みさえできれば他の怪物らとは異なり味方側として操縦可能」なアルマダ・ロボット(『アトランティック・リム』仕様で登場)など、ちょっぴりひねった見せ方・出し方も面白い。

劇中で宣伝行為!? メタ的ギャグとファンサービス満載

そうした怪物たちの活躍の合間には、登場人物がやたらアサイラム映画・ドラマのタイトルを箇条書き気味に読み上げようとしたり、それらを自画自賛することによるあからさまな宣伝行為を挟んできたりする。さらには『メガ・シャークVSジャイアント・オクトパス』の日本版ポスターがさらっと映るシーンも。この手のメタ的なギャグとファンサービスには事欠かない一本だ。

一方で、モンスターの出ないストーリー部分はいつも通りグダグダしており、展開も行き当たりばったり気味。これまで長らく対立していた主人公姉妹の和解と共闘を軸に据えた物語そのものは悪くないものの、もっぱらそっちばかりに焦点が当たっており、肝心のアサイラム映画キャラクターたちの活躍は意外と少なめ。かつシーンがぶつ切りで結局その後どうなったのかわかりにくいシーンばかりなのは、残念なポイントでもある。

あまり期待しすぎてもいけないが、アサイラム映画の有名どころを事前に5~6本も観ている方ならば、十分に楽しめる余地がある作品だ。

文:知的風ハット

『マルチバース・アルマゲドン』はCS映画専門チャンネル ムービープラス「特集:24時間 モンスターバトル!」で2023年8月放送(TV初)

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