揺れる世界、日本の力期待 米保守系シンクタンク日本部長

インタビューに応じる米ハドソン研究所のケネス・ワインスタイン日本部長(共同)

 米国の保守系シンクタンク、ハドソン研究所の日本部長に7月に就任した国際政治学者ケネス・ワインスタイン氏は、ロシアや中国が国際秩序を揺るがす世界で日本が果たせる役割は大きいとし、岸田政権の指導力に期待した。今月18日に米大統領山荘で開かれる日米韓首脳会談は3カ国の絆を強める好機だと語った。(ワシントン共同)

 ―岸田政権は日本の防衛力強化を進めている。

 「昨年12月に国家安全保障戦略など安保関連3文書を改定した日本は、自国防衛に責任を負うという考えを戦後初めて明確にした。反撃能力(敵基地攻撃能力)などを実際に運用可能にする必要がある。防衛費を5年間で43兆円に増やすことに国民の理解を得られるか、適切に予算が使われるかなど、課題は多い。だが日本の姿勢が変わったということが重要だ」

 ―日米同盟の現状は。

 「より強く、自信を持った日本は米国の国益にかなう。世界規模の課題に取り組む上で日本の発言力が高まるからだ。岸田文雄首相が3月にウクライナを訪れて支持を強く打ち出したことは、ロシアの侵攻が欧州だけでなく人類全体に対する侵害だということを示した。日本は『グローバルサウス』と呼ばれる新興・途上国やアフリカ諸国との関係でも独特の信頼を得ている。米国の対外関与に冷ややかな目がある今、日本は頼りになる。ルールに基づく国際秩序を侵している中国への国際的な批判を日本が主導すれば、米国がやるよりも有効だ」

 ―日米韓首脳が18日に会談する。

 「バイデン大統領が岸田氏と尹錫悦大統領を大統領山荘キャンプデービッドに招いた。絆を強める絶好の機会だ。日韓2国間の関係改善の流れを固めることもできる。中国や北朝鮮というインド太平洋地域の課題に立ち向かうため、協力を深める必要性について非常に前向きな共同声明が出ると思う」

 ―課題は。

 「中国に対する最大の抑止力を維持しながら、中国を脅かす意図がないことを示して誤解が生じないようにしなければならない。微妙なバランスが必要だ。北朝鮮については意図を把握しなければならないが、中国を理解するよりもはるかに複雑で困難だ」

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 ハーバード大で博士号取得。2011~20年、ハドソン研究所の所長兼最高経営責任者(CEO)。20年にトランプ前政権の駐日米大使に指名されたが、政権交代で人事が白紙になった。

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