<レスリング>【2023年インターハイ・特集】重量級の宝庫・日大への出げいこで実力アップ! 先輩・吉田アラシ(現日大)に続けるか…男子125kg級・藤田宝星(埼玉・花咲徳栄)

 

 一昨年、昨年の2大会連続でモンゴルからの留学生(バトバヤル・ナムバルダグワ=千葉・日体大柏、現育英大)に優勝をさらわれたインターハイ個人戦・男子の最重量(125kg)級。今年は日本選手のみの闘いとなり、3月の全国高校選抜大会を制した藤田宝星(埼玉・花咲徳栄)が制した。

▲3年ぶりに日本選手の王者が誕生した個人戦・男子125kg級

 毎週末のように兄(藤田龍星=昨年の全日本選手権2位)や高校の先輩でもある吉田アラシ(今年のシニア・アジア王者)のいる日大に出げいこに行き、シニアの全日本トップ選手と練習を積んでいるのだから、優勝も当然か。だが、「うれしいです」と第一声のあと、喜びを表す言葉が続かない。

 取材慣れしていないこともあるだろうが、初戦の岩崎和志(神奈川・磯子工)との試合で3-1ともたつくなど、簡単に勝たせてもらえず、きつい闘いだったことも、すんなりと喜びが出て来ない要因か。緊張してしまい、「思うような動きができなかった」とのこと。一度全国王者になっても、常に不安との闘いがあるのが勝負の世界。「練習でも、よくポイントを取られていましたし…」と振り返る。

 だが、以後の4試合は無失点。豪快なタックルを決めるシーンもあり、“動ける最重量級選手”を印象付けた試合内容。決勝は全国高校選抜大会決勝と同じ相手で、そのときは7-0で勝っている。今回の対戦に臨むにあたっても、「組み手がしっかりできるかどうか、不安でした」と言う。それは杞憂(きゆう=要らぬ心配)に終わり、11-0のテクニカルフォール勝ち。得意のフットワークを駆使し、常に試合の主導権をにぎっての試合だった。

▲スピードとパワーあふれる豪快なタックルを披露(準々決勝)

茨城産の納豆パワーで最重量級の体づくり!

 重量級の選手といえば、腕力が強い、というイメージがあるが、「腕だけでは闘えません。脚を使って相手を動かすことを意識してやっています」と言い、スピードある闘いを心がけている。

 練習では四股(しこ)をしっかりやって足腰を鍛え、1日4食(朝、昼、夜、夜食)の食事で練習に耐えられる体づくりにも力を入れている。好物は、出身の茨城県の名産の納豆。毎日ではないが、夜食は2合の米に納豆をかけて胃の中に入れるとか。

▲決勝でもスピードは衰えず、相手を翻ろうして快勝した

 もっとも、「食べるだけでは脂肪がついて太るだけですから」と、十分なトレーニングでエネルギーを消費することも忘れない。日大への出げいこでの吉田アラシらとの練習では、「いつもやられています」とのこと。体力も技術もまだまだと痛感することばかり。ハイレベルな大学選手の間で鍛えられているので、高校二冠を制しても、向上心が鈍ることはないだろう。

 インターハイが終わると、すぐにU17世界選手権(トルコ・イスタンブール)出場が待っている。「身長177cm、体重98kg」は、世界の最重量級では小さい部類に入ることは承知している。しかし「脚を使って相手を動かしたい。初めての国際大会にわくわくしています」と話し、トルコへ向かった(注=4日に試合があり、初戦突破ながらも上位進出ならず)。

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