「号泣マネジャー」今や伝統 3季連続甲子園に挑む社、快進撃を願う2人の思い 全国高校野球

社高校野球部マネジャーの広田芽衣さん(左)と辻望衣さん。衝突を乗り越え、強い絆でチームを支える=5日、西宮市の甲子園球場(撮影・鈴木雅之)

 高校野球の甲子園大会を3季連続で戦う社高校(兵庫県加東市木梨)野球部の選手を、そばで支えているのが女子マネジャーだ。社高校では昨夏も兵庫大会初優勝の直後に泣きじゃくる「号泣マネジャー」が話題となったが、今年の3年生コンビにとっても「涙」はキーワードだった。

 同県加西市出身の辻望衣さん(17)と加東市出身の広田芽衣さん(17)。下級生のマネジャーと計6人で、選手60人が活動する部の庶務を担う。水分や補食の準備、道具の手入れ、来客対応など仕事は数え切れないほどあり、当初は「うまくできず何度もやめたくなった」と2人は口をそろえる。互いに励まし合い、選手らにも背中を押されながら乗り越えてきた。

 昨年、初めて夏の甲子園出場をかなえ、感動で号泣した先輩の藤本真央さん(19)が引退した後は最上級生に。チームは今春、2004年以来となる選抜大会に出て、「夏勝った先輩の後でプレッシャーがあるのにすごい」(辻さん)と躍進を喜ぶ一方、2人は意見の食い違いから小さなけんかを繰り返していた。

 6月、主力チームの遠征にどちらが同行するかを巡ってLINE(ライン)でもめた。顔を合わせても気まずい状況に。「これじゃあかん」。グラウンドから離れたベンチで向き合った。気になったことは直に確かめたい辻さんと、遠慮しがちな広田さん。直球と変化球。性格の違いからたまった不満を吐きだした。チームを思うが故のぶつかり合い。気付くと2人で大泣きし、心が晴れた。

 絆を強めたコンビは、夏も息の合ったベンチワークを展開。選手の好プレーに「よく泣く」辻さんの背を広田さんがさすり、決勝でサヨナラ勝ちした時はベンチで抱き合って泣いた。

 甲子園でベンチ入りできる記録員は1人。初戦敗退した選抜大会は広田さんが担当したため、夏は辻さんが9日の初戦に入り、以降は交代で担う。辻さんは「甲子園で部活を引退できるなんて」と選手に感謝し、広田さんは「一日でもみんなと長く」と快進撃を願う。(初鹿野俊)

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