愛された「ドカ盛り」店、半世紀の歴史に幕 惜しむ声盛りだくさん、店主は感無量 豊岡

150グラムのご飯(奥)と比べると、多さは一目瞭然=豊岡市若松町

 大盛りメニューで豊岡市民らに愛されてきた喫茶店「リンド」(兵庫県豊岡市若松町)が、29日の営業を最後に閉店する。多くの人たちの胃袋を満たしてきたが、家族の体調不良を理由に、開業50年の節目でのれんを下ろす。長年通ったファンから惜しむ声が上がっている。(丸山桃奈)

 店主の森垣哲夫さん(75)が1973年、妻広子さん(71)とともに開いた。食べ盛りの高校生や工事現場で働く若者たちが多く来店。「食べる量は多い方がいい」と、どのメニューもボリュームたっぷりで提供するようになった。

 店の一番人気は「唐揚げライス」。2合ほどのご飯に、こぶし大の鶏の唐揚げをごろごろと載せ、サラダを山のように盛り付ける。皿が埋め尽くされる量の多さにして、880円という財布に優しい価格に、初めて来店した人は驚きと笑顔を隠さない。

 店は昼食時間帯だけでなく、終日にぎわう。午前7時半の開店から、コーヒーとトーストを食べに近所のお年寄りが訪れ、夕方には飲み物やシフォンケーキなどを目当てに立ち寄る女性も。ほぼ年中無休で店を開け、幅広い客層に親しまれてきた。

 これまで森垣さん夫妻のほか、息子とその妻たちも加わり、家族で店を切り盛りしてきた。しかし、広子さんの体調が悪化し、森垣さん自身も年齢を重ねたことから、開業から半世紀を区切りに店を畳むことを決めた。

 「50年間、当たり前のようにやってこれた。ほっとしたような寂しいような」と森垣さん。閉店を店内の貼り紙で告知してからは、かつての通い慣れた客が懐かしそうに姿を見せるように。今の常連客からは「なんで辞めるんだ」「考え直して」と、惜しむ声が上がる。

 「こんなにも思ってくれてるんだと実感した。閉店まで今まで通り、何も変わらない。でもやっぱり寂しいな。これからどうして過ごそうか…」。森垣さんは複雑な表情で、来し方に思いをはせた。

 豊岡市若松町7の38。29日まで無休。午前7時半~午後8時(ラストオーダーは同7時半)。TEL0796.22.1568

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