キャンベルをジュースに加工販売 岡山フルーツ農園が新事業

岡山フルーツ農園が加工用として栽培しているキャンベル

 農業法人・岡山フルーツ農園(岡山市北区本町)は、黒系ブドウ・キャンベルを収穫し、ジュースとして加工、販売する事業に乗り出した。キャンベルは病気に強く、加工用として栽培することで作業負担を減らせるため、耕作放棄地を借りて規模を拡大する経営戦略にマッチ。新たな収益源に育てつつ、農地の保全にもつなげる。9月にも自社の直売所(同市東区西大寺門前)で発売する。

 放棄地だった同市東区草ケ部の園地3カ所計70アールに2020年、250本を定植。本格的な収穫は今季が最初で、7月28日から今月上旬までに4トンを見込む。食品メーカーに委託し、全量をジュースにする。

 キャンベルは、香りが高い中粒のブドウ。耐病性に優れ、収量が多い特長も持つ。米国で育成され、明治末期に岡山県内に持ち込まれて普及。1980年代以降は大粒種なしのピオーネへの改植が進み、現在は岡山市内外でほそぼそと作られている。

 同社は「土地利用型果樹経営」を掲げ、東区の草ケ部、上道地区で、単独経営体としては県内最大級の4ヘクタールでピオーネやシャインマスカットなどを栽培。キャンベルの生産と加工販売は、品種特性から「手間をかけずに大規模に栽培できる」(同社)とみて事業化に着手した。かつて県産の規格外品がジュースの原料に利用されていた歴史も踏まえたという。

 栽培では、生食用に欠かせない房作りなどの作業をカット。試算では、10アール当たりの収量が2.5トンとピオーネの約1.5倍に上り、労働時間は20分の1程度に短縮できるという。

 高原弘雅社長(40)は「キャンベルは黒系ブドウ独特の芳香が強い。低コストの加工用として栽培することで規模拡大の切り札の一つになり得る」と話している。

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