[地域発 未来へ]JA秋田しんせい アスパラガス半促成で好調

生産者と話すJAの宮本指導員(右)(秋田県にかほ市で)

販売2億円突破 秋田県のJA秋田しんせいは、生産量県内一のアスパラガスの産地で、ハウスを使った半促成栽培の栽培面積の拡大に力を入れている。露地ものよりも約1カ月早く出荷できるので、高単価が期待できる。2022年度には、露地と合わせた販売額が部会設立後初めて2億円を超えた。

JAでは、14年から半促成栽培をスタート。露地栽培より収量性や作業性が良く、米との複合経営で所得向上を図るため、JAは県と協力し栽培マニュアルを整備し、農家に提案してきた。管内が沿岸部から山地まである利点を生かし1年を通したリレー出荷にも取り組み、3~10月の長期間の出荷を実現している。

面積拡大へ、JAはこれまで新植に必要な費用の6分の1を独自に助成してきた。20年度からは、半促成栽培の新規導入にかかる初期費用の4分の1を助成する。行政の支援を組み合わせて農家の導入コストを下げ、環境を整備。23年度には半促成の新規生産者が3人部会に加わった。

生産者と話すJAの宮本指導員(右)(秋田県にかほ市で) 栽培技術向上へ指導を強化しようと、デジタル技術を活用した営農支援サービス「あい作」を導入。生育状況の確認と情報発信の強化に役立てる。老齢株の状況をリスト化し、新植・改植への提案活動も行なっている。

半促成栽培に取り組む、にかほ市の農事組合法人小出ファームの佐々木正憲代表は「行政やJAの支援が面積を拡大するきっかけとなった。あい作を活用することで市況の確認や相談もしやすくなった」と強調する。

同法人では20年から21年にかけて半促成栽培用ハウスを24棟建設。アスパラガス用の施設としては県内でも最大級の栽培面積を誇る。22年度から全棟で出荷が始まり、10アール当たり収量が2トン以上と県の基準収量を上回る。地域雇用も積極的に行い、働きやすい環境づくりにも取り組む。

JAアスパラガス部会では今後、資源循環型農業の構築にも取り組む予定だ。管内はブランド牛「秋田由利牛」の産地で、豊富な堆肥資源を生かしアスパラガスや稲作へ堆肥を供給。コスト低減や安全・安心な農産物の生産を目指す他、稲作で出たもみ殻を牛床の敷料として使用するなど資源の循環を目指す。

JAの宮本みどり指導員は「次は3億円の販売額を目指して部会員と協力して取り組みたい。デジタル化や資源循環は、重要なポイントだと考えており、農家所得の確保と持続可能な農業を目指したい」と意気込む。

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