67年の労働運動一冊に 宇都宮地区労の元事務局長田中さん 資料や証言基に連帯の足跡執筆

宇都宮地区労の歴史をまとめた「歌を忘れたカナリアたちへ」を手にする田中さん

 【宇都宮】2021年に解散した市内の労働組合による地域共闘組織「宇都宮地区労働組合会議(宇都宮地区労)」元事務局長の田中一紀(たなかかずのり)さん(81)はこのほど、宇都宮地区労67年の歴史をつづった記録「歌を忘れたカナリアたちへ 宇都宮地区労の軌跡」を発行した。県庁記者クラブでこのほど記者会見し「私が活動した時期を中心に、地域労働運動について私なりに考え、活動記録をまとめた」と話した。

 宇都宮地区労は1954年4月に結成。80年代後半の最盛期には100超の労組が参加し、多くの労働争議を支援した。平和運動にも積極的に取り組み、太平洋戦争の宇都宮空襲を語り継ぐ市民団体「ピースうつのみや」の活動にも加わった。

 だが徐々に参加労組が減少し、議長選出が困難になるなどしたため、2021年3月、解散した。

 田中さんは宇都宮大を卒業後、1969年に宇都宮地区労事務局に入局。84~2000年には事務局長を務めた。解散後、活動記録を残そうと昨年、執筆を始めた。

 記録は全6章で構成され、組織としてのあらましや関わった争議、地元・宇都宮での平和運動や沖縄県の平和行進に参加し同県民と連帯した活動などを紹介。田中さんは手元に残る大会議案書や経過報告書、記念誌などの資料のほか、宇都宮地区労関係者や共闘した労働組合員らの証言も集めた。

 田中さんは「周囲の協力で出版できた」と感謝し、地域で連帯した労働運動を振り返り「団結して、交渉して、生活を豊かにできる労働者の権利を再認識し、自分ごととして見つめ直してほしい」と思いを込めた。

 B5判、303ページ。2200円。県内各書店で販売中。(問)アートセンターサカモト028.621.7006。

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