【MLB】 マリナーズが5連勝でプレーオフまで2.5差 クローザー放出でも揺るがぬ「救援投手工場」

写真:エンゼルスとの4連戦で4連勝し、勝利を祝うマリナーズの選手たち

日本時間8月7日、マリナーズは敵地・エンゼルスタジアムでのエンゼルス戦で延長戦の末勝利を掴み5連勝。プレーオフ進出圏内まであと2.5ゲームまで詰め寄った。

試合の最後を締めたのはなんとメジャーで一度もセーブを記録したことのない苦労人だった。エンゼルスのチェイス・シルセスとマリナーズのブライス・ミラーの両先発が好投し、同点の9回裏でマウンドに上がったのはタイラー・ソーシード。見事三者凡退で抑えると、1点を勝ち越した10回裏も続投。無死二塁から始まるタイブレークにもかかわらず無失点に抑え、チームに勝利をもたらした。

ソーシードは昨年までにメジャー通算33試合。勝ち負けセーブはなし、ホールドも1つだけという成績からも、それほど重要な場面で起用されていたわけではないのがわかるだろう。今年30歳を迎えた左腕は昨年オフにブルージェイズから放出。その後メッツと契約するも再び放出され、マリナーズに移籍していた。

そんなソーシードだが、今季はここまで35試合に登板し、34.2イニングで36奪三振を記録するなど防御率2.08。強力なマリナーズのブルペン陣の中にあって頭角を現すと、ついに今日は同点の最終回を任されるほどの信頼を得た。

今季のマリナーズはメジャーでも屈指の救援陣を誇っている。選手が生み出した貢献を勝利数に換算したWAR(Fangraphs算出)で見ると、マリナーズの救援陣は4.6。オリオールズ(6.0)に次ぐアメリカンリーグ2位だ。そしてその救援陣で重要な役割を担うのが、ソーシードをはじめとした他球団では結果を残せなかった投手たちだ。

この日ソーシードの前に投げたジャスティン・トパもその1人。前所属のブリュワーズでは3年間でわずか17試合登板と、なかなかメジャーに定着しきれなかった32歳の右腕は今年1月にトレードで移籍して以降大活躍。ここまでチーム内2位の49試合に登板し、防御率2.51、WAR0.8と見違えるような投球を見せている。

このような「投手工場」ぶりはチームの勝利にも有効なのはもちろんだが、選手補強の上でも有利にはたらく。マリナーズは今年のトレード期限でクローザーのポール・シーウォルドをダイヤモンドバックスに放出し、内野手のジョシュ・ロハスと2人の有望株を獲得した。

これだけでは単によくあるトレードだが、重要なのはシーウォルドはマリナーズが以前マイナー契約で獲得した選手であるということだ。マリナーズは対価0で獲得した選手をクローザーに「改造」し、しかもその対価として3人の選手を獲得できたといえるのだ。これほどの投手育成能力は、明らかに他球団に対するアドバンテージとなっている。

今年のトレード期限ではどちらかといえば来年度に向けた戦力整備に注力したように見えたマリナーズ。ただ、強力救援陣はクローザーが抜けてなお高いクオリティを保っている。逆転でのプレーオフに向け、彼らの頑張りはいっそう重要になることだろう。

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