備中漆の漆掻き 真庭で最盛期 高い透明度、美しいつや

石賀さん(左)が見守る中、にじみ出る漆を採取するディロングさん

 国産漆の中でも高い透明度と美しいつやで知られる備中漆の漆掻(か)きが、真庭市蒜山上福田の植栽地で最盛期を迎えている。作業は9月末にかけて行われ、蒜山地域に伝わる岡山県重要無形民俗文化財・郷原漆器の製作に生かされる。

 2.5ヘクタールに約750本が植えられており、管理する同市の委託で郷原漆器生産振興会が7月上旬から週2日のペースで取り組む。

 7日は会員で長年漆掻きを担当する石賀英明さん(70)=同市=と、郷原漆器の継承に意欲を燃やす木工芸作家デービッド・ディロングさん(44)=鏡野町=が作業。採取に適した樹齢30年の木を選び、樹皮を剥がして幹にかんなで溝を刻んだ。次第に白い樹液が流れ出すと、手際よくへらですくって容器に入れていった。

 今年も10本の木から例年並みの計2キロを集め、約半年かけて熟成させる。ディロングさんは「細かな作業で採れる量も少ないが、楽しくてやりがいを感じる。自ら製作した漆器に使うことができれば夢やロマンも広がる」と目を輝かせた。

 かつて生産が盛んだった備中漆は、ダム建設などに伴い1960年代から生産量が激減。県郷土文化財団と林原共済会が94年から真庭、新見市の植栽地で復興を進め、現在は両市が管理している。

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