原田美枝子主演『桜の園』いよいよ開幕

2023年8月にPARCO劇場開場50周年記念シリーズとして、『桜の園』を上演。東京PARCO劇場から始まり、宮城、広島、愛知、大阪、高知、福岡と巡演。
ロシアの劇作家アントン・チェーホフが1903年に執筆、翌年に初演された『桜の園』。チェーホフ最後の、そして最も愛されてきた戯曲。日本では数えきれないほど上演されているポピュラーな作品。
本作の大きな時代の 転換点に人生の価値観の変化を余儀なくされ、内に葛藤や矛盾を抱えている登場人物の姿は、現在を生きる私たちに通じるものがある。 今回の台本は、サイモン・スティーヴンスが現代の俳優が語るにふさわしい軽妙な台詞に書き換えながらも、『桜の園』の本質を率直に捉え、戯曲を古典文学としてではなく現代の劇場で上演するものとしてアダプテーション。

『セールスマンの死』を新たな解釈で魅せたショーン・ホームズが、その演出手腕で『桜の園』をどのように立ち上げるか、ショーン・ホームズにより120年前の物語が、時代を超え、国境を越え、今なお現在に生きる私たちに問い掛けてくる「声」を掘り起こし、2023年に響かせる。
女主人のラネーフスカヤ役には原田美枝子4年ぶりの舞台出演。幼少からラネーフスカヤを慕っていた実業家ロパーヒン役は八嶋智人。新しい思想でラネーフスカヤの娘アーニャに影響を与えるトロフィーモフ役は成河。ラネーフスカヤの養女ワーリャ役は安藤玉恵。娘のアーニャ役は 川島海荷。
桜の園の管理人のエピホードフ役は前原滉。アーニャの家庭教師シャルロッタ役は川上友里。 ラネーフスカヤとともにパリに同行していた若い召使いヤーシャ役は竪山隼太。メイドのドゥニャーシャ役は 天野はな。近所の地主ピーシチク役は市川しんぺー。女主人の留守を預かっていた兄ガーエフ役は 松尾貴史。先代から仕える老召使フィールス役は村井國夫、また、新たに永島敬三、中上サツキ二人の俳優が加わった。

フォトコールで披露されたのは、物語の出だし部分、おおよそ50分ほど。
出だしはラネーフスカヤ(原田美枝子)を待つロパーヒン(八嶋智人)とメイドのドゥニャーシャ(天野はな)。ドゥニャーシャに好意を寄せる桜の園の管理人のエピホードフ(前原滉)が会話に入ってくる。服装は当時のロシアのイメージではなく、現代にも通じる服装、セットも至ってシンプル。そこへラネーフスカヤを迎えに行った一行とともにラネーフスカヤが屋敷に帰ってきた。会話から様々なことが見えてくる。

娘のアーニャ(川島海荷)は「ママは高いものを注文するの」、どうも浪費癖がある様子。

桜の園は借金返済のため売りに出されている、ロパーヒンは説明する、土地の一部を別荘用地として貸し出せば、難局は避けられると助言するも、ラネーフスカヤはピンときてない様子。猛反対するラネーフスカヤとガーエフ(松尾貴史)。ラネーフスカヤは亡くなった息子の家庭教師をしていたトロフィーモフ(成河)と再会。子供を思い出し涙するラネーフスカヤ。原作を知っている、あるいはこの作品を何度か観劇したことがあれば、展開やオチはもうわかっている。舞台端に小さな家、古典としてではなく、今、現代でも通じるテーマ。

それから全員が集まり、フォトセッション、それから簡単な会見が行われた。
主演の原田美枝子は「チェーホフの脚本でショーンさんというすばらしい演出家、ショーンさんが船長で、みんなで大航海に出ている感じ。いい船出が出来るんじゃないかと」と船出に例えて。映像の仕事が多い原田美枝子、舞台は4年ぶり、2019年の『MOTHERS AND SONS~母と息子~』以来。八嶋智人は「原田さんを中心に新しい試みを…ワクワクしています。たくさんの人に劇場に来ていただければ」とコメント。セット、衣装一つとっても既成概念の『桜の園』とは一線を画している。成河は「すごく刺激的、まだまだ」とコメントしたが、やれなやるほどに新たな発見がありそう。安藤玉恵は「難しいかなと思ってた」と語る。チェーホフ、『桜の園』、小難しいという印象を抱いている観客も多いと思うが、安藤は「とてもわかりやすい」と太鼓判。川島海荷も
同じく「台本読んだ時は難しいと思ってた」と語り「稽古を重ねていくうちに本当に立体的になって、やればやるほど面白いと実感」したという。前原滉も川島海荷と同じ感想を抱いたそうで「こういう風に組み立てていくんだー」とコメントし「楽しみにしていただければ」と力強く。松尾貴史は「チェーホフは初めて」、意外。続けて「ここに私のような者が」と謙遜。先代から仕える老召使フィールス役の村井國夫、そこにいるだけで存在感を放つ。「言葉の一つ、一つ、なぜ、こういう言葉になるのか」と語る。人間の様々な業を描き、人間そのものを提示、戯曲のパワー。

また、演出のショーン・ホームズについて原田美枝子は「本当にパワーがあり、ものすごい繊細」と語る。稽古は楽しかった様子、「みんな、ものすごいエネルギーをもらいながら、つい最大限のエネルギーを出す、みんなを持ち上げてくださる、良い力を引き出してくれる」と語る。そこは他の俳優陣も大きく”同意”。八嶋智人は「限定された時代ではない…人間とはどういうものなのか、人間を俯瞰して…」と語るが原作の普遍性、だからいつまでもどこかで上演される所以。川島海荷は演出について「すごい的確にアドバイスしてくださる、トーンや語尾だったり、こういう気持ちでいっていたのかと…発する言葉ではなく、中からすくってくださる、ショーンさんの言葉の1つ1つを大事に」と言い、前原滉は「わざわざ、日本語で言ってくださったり」とコメント。成河も「奥の奥まで掘り続けて」とコメント。松尾貴史も「挑戦させてもらってる」と語る。稽古のことや作品についてまだまだ語り足りない面々。残念ながら時間となり、最後にPR、原田美枝子は「楽しいんですね、この空間、人を動かす、心を動かす、動くってこういうことかと…俳優がやっていることを、直に感じてもらえる時になったので、ぜひ楽しみに」コロナ禍もある程度、落ち着いてきた昨今、猛暑だが、劇場は涼しい!ので、軽やかな、新しい『桜の園』、公演は東京は29日まで、その後、各地を巡演、千秋楽は福岡9月24日。

<演出家ショーン・ホームズ 特別講義実施 オフィシャルレポ>

概要
PARCO劇場開場50周年記念シリーズ
『桜の園』
作=アントン・チェーホフ
英語版=サイモン・スティーヴンス
翻訳=広田敦郎
演出=ショーン・ホームズ
出演=原田美枝子、八嶋智人、成河、安藤玉恵、川島海荷、前原滉、川上友里、竪山隼太、
天野はな、永島敬三、中上サツキ、市川しんぺー/松尾貴史、村井國夫

東京公演:8月7日(月)~8月29日(火) PARCO劇場 ※8月7日(月)プレビューオープン
宮城公演:9月2日(土) 東京エレクトロンホール宮城 大ホール
広島公演:9月6日(水) 上野学園ホール(広島県立文化芸術ホール)
愛知公演:9月13日(水) 日本特殊陶業市民会館 ビレッジホール
大阪公演:9月16日(土)~9月17日(日) 森ノ宮ピロティホール
高知公演:9月20日(水) 高知県立県民文化ホール・オレンジホール
福岡公演:9月23日(土)~9月24日(日) キャナルシティ劇場

公式サイト:https://stage.parco.jp

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