グッチの低迷が響き、ヴァレンティノ出資もケリング株の上昇にはつながらず

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パリ(ロイター)――複数の高級ブランドを展開するフランスのケリングは、イタリアの高級服ブランド「ヴァレンティノ(Valentino)」の株式30%を取得した。ファッション関連ポートフォリオを強化しているケリングだが、低迷が続く主力ブランド「グッチ(Gucci)」への依存を軽減するという点では、今回の出資による効果は少なくとも短期的には見込めないようだ。

グッチはケリングの売上高の半分、営業利益のほぼ3分の2を占める。2015年から2019年にかけて目覚ましい成長を遂げたものの、競合する「LVMH モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン」や「エルメス(Hermès)」に遅れを取り、こうしたブランドがコロナ後に回復に向かう中、苦戦を強いられている。

ケリングは先週、グッチの売上回復を目指し、長年グッチに貢献してきたCEOのマルコ・ビザーリ氏の退任を含む大規模な経営刷新を発表した。マネジング・ディレクターを務めるジャン=フランソワ・パル氏を暫定CEOに任命し、本格的な後任を探す。

第二四半期の収益が予想を下回る中、ケリングは27日、ヴァレンティノに17億ユーロ(19億ドル)もの出資をすると発表した。ヴァレンティノはオートクチュールやレッドカーペットで着用される衣装のデザインなどで知られる。

ケリングは、カタールの投資ファンド「メイフーラ」からヴァレンティノの株式30%を取得し、今後5年間で残りの株式を取得するオプションを持つ。また、メイフーラとの戦略的パートナーシップ拡大を目指すとし、メイフーラがケリングに出資する可能性についても言及した。

株式取得のニュースもケリング株上昇にはつながらず、8時24分(GMT)時点で2.3%下落している。

2022年の売上高はグッチが105億ユーロだったのに対し、ヴァレンティノが14億ユーロだったことに触れ、エグザーヌBNPパリバでアナリストを務めるアントワーヌ・ベルジュ氏はヴァレンティノへの出資は「素晴らしいが長期的だ」と話す。

「小さすぎず大きすぎず。収益性は非常に高いが改善の余地がある。しかし、ケリングのグッチへの依存を下げるという点では、少数株を取得するだけでは短期的には何も変わらない。」

本案件についてヴァレンティノは、ケリングには米国投資銀行のセンタービュー・パートナーズが、メイフーラにはフランスの投資銀行「ロスチャイルド」とイタリアの銀行グループ「インテーザ・サンパオロ」がアドバイザーを務めたと語った。

(1ドル=0.9119ユーロ)

取材:シルビア・アロイジ/ミモザ・スペンサー(パリ)、エリサ・アンゾリン(ミラノ) 編集:マーク・ポッター

原文:REUTERS/翻訳:M&A Online

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