40代で直面するお金の課題にNISAとiDeCoを活用すべき理由

お金は、人生を豊かにするためのパーツに過ぎないため、その使い方について他人が口だしをすること自体おせっかいな話だと思うのですが、長年FPとしてお客様のライフプランに関わっていると、年代別に多少の共通点と課題を見いだすことができます。

今回は40代をテーマに、お金との関わり方を考えていきます。


お金を使う前に考えたいこと

40代は、とにかく支出が増える年代というのが正直な印象です。住宅を購入される方も多いですし、お子さんが受験期に入り、いよいよ教育費がボリュームを増します。また仕事面でも転機が訪れる方も多いです。

例えば住宅購入でいえば、今は金利が低いですから購入のチャンスといえばチャンスでしょう。しかし、今後の金利の読みは困難で、頭金なしで多額の住宅ローンを組むと金利の上昇により、瞬く間に家計が赤字となってしまうリスクがあります。安易な借り入れほど怖いものはありません。

最近は、ローンの全額を変動金利で借りる方が少なくありません。共働きだからと目一杯のローンを組んだあと、ご主人が病気になって仕事が続けられなくなった、という方もいらっしゃいました。やはり「まさか」は想定するべきです。

対策としては、情報の質を高めることです。住宅ローンもさまざまな借り方があります。全額を変動金利で借りる必要もなく、固定金利と組み合わせることもできます。変動金利には、125%ルールがあり、表向きはどんなに金利が上昇しても、返済額は125%までしか上がりません。

しかしそれでは、金利上昇による返済利息を吸収することができず、結果的に支払切れなかった金額が後ろにずれ込み、返済期間を延長させてしまいます。これを「未払い利息」と言います。このような金利上昇に備えるには、繰り上げ返済用に資金を準備しておくことがポイントです。

繰り上げ返済とは、まとまったお金を「元金」の支払に充てることで、そこに発生する利息の負担が軽減でき、さらに返済期間を短縮できる方法です。元金が減るので、金利上昇の対策として有効です。他にも、支払額の調整のために繰り上げ返済を行う場合もあります。

いずれにしても、毎月の支払額とは別に返済資金を用意しておけば、戦略的に住宅ローンと向き合える、ということです。具体的にはNISAを活用して準備をしていきます。この場合、目的は金利上昇に備えるわけですから、預金だけで繰り上げ返済用の資金を準備していては間に合わないので、投資も利用する必要があるわけです。

またそもそもの家の購入の段階で、我が家のサイズに合った家を購入するという姿勢も大切です。お子さんがいらっしゃる方は、家族年表を書いてみてください。西暦、夫婦の年齢、お子さんの年齢を時系列に書き並べ、これからの生活をイメージしてみましょう。

お子さんと一緒に暮らせる時間に比べると、夫婦2人の時間の方が長くないでしょうか?今はお子さん達とテーブルを囲む、賑やかなリビングをイメージして住宅購入を考えているかも知れませんが、お子さんはどんどん成長しやがて巣立っていくものです。

時間軸を少し長めにとって俯瞰すると、今購入しようとしている家に対する価値感が少し変わるかも知れません。「新築にこだわらなくても良いのでは?」「中古でも街としての機能が充実している方が良いのでは?」「賃貸でも良いのでは?」と、選択肢が増えるかもしれません。

教育費はお子さんの考えを重視

お住まいのエリアによっては、中学受験が当たり前ということも耳にします。「周りがみんな塾に行っているから」と有名なところに通わせると、お金に羽が生えたかのように飛んでいってしまいます。

テキスト代のほか、講習費用や合宿やと請求書がどんどんくるので、「予定していた以上に教育費がかさんでしまった」とか、もはやいくら払ったのか分からないと苦笑される方もいらっしゃいます。大切なお子さんの将来のためならば、何がなんでもお金は出してあげたいという想いは理解できますが、それが本当にお子さんのためなのかというのも、もう一度考えたいところです。

小学校高学年くらいにもなると、お子さん自身の考えをしっかりと表現することができるようになります。またそれぞれの個性もはっきりしてきますから、お子さんの特性による進路を考えやすくなるでしょう。

特別に秀でた才能があるのであれば、それを延ばすのが一番ですが、そうでなければ基本的な知識をしっかり身につけることの方が重要です。勉強よりも、スポーツが得意だという子もいるでしょうから、中学受験だけが進路でないかも知れません。

子育ては長丁場ですから、塾代にお金をたくさん使っていては息切れします。私立中学のあとは私立高校、そして私立大学というのが一般的なので、あっという間に1,000万円は授業料としてかかってきます。

これらの費用を、ギリギリの家計から支出してしまうと、やはりどこかで無理が生じてきます。最近は、子育て支援策が充実してきて、高校も無償化が進んでいますが、それでも所得制限や地域による違いがあるものもありますし、かかるお金はかかります。また私立に入れば、子どもであってもお付き合いがあるので、お小遣いも少し上げてあげないといけない、という話も聞きます。

あげくの果てに奨学金を借り、お子さんが初任給からその返済をするなんてことになったら、本当にお子さんのためになっているのだろうか、と考えてしまうこともあります。大人の入り口に立っているお子さんであれば、ぜひ今後の進路はお子さんの考えを中心に、その想いを応援するお金の準備をしていただきたいと思います。

ここでも使い勝手のよいNISAが活躍します。ジュニアNISAが2023年末を持って廃止になるのは残念ですが、両親それぞれがNISAを活用し、早め早めにお子さんの将来のための積立を始めるのが良いでしょう。

人生の折り返しにふさわしいお金の使い方

人生100年時代ですから、高齢になっても元気で働いている方が増えてきました。しかし今の世の中は知識基盤社会ですから、新しい知識や情報技術を習得しなければ、納得感のある収入を得ることが難しい時代でもあります。働く場はあるけれど、働く質はそれぞれだということです。

40代はまだまだ若いとはいえ、現役としては折り返しにさしかかっているわけですから、このあたりでしっかり自分の仕事スキルの棚卸しと、次につながるキャリアの構築にも取り組まなければならないのではないでしょうか?

であれば、支出がかさむ家計ではありますが、リスキリングに十分な資金投下ができるよう、家計を見直す必要もでてきます。お子さんの教育費については前述しましたが、自分自身への教育費もまた重要であるということです。

その際、60歳以降の挑戦資金に特化したiDeCoはしっかり活用したいところです。毎月の掛金は全額所得控除になりますから、支出がかさむ40代にとってはありがたい節税でしょう。

企業年金がない会社にお勤めの方は、月23,000円が、企業年金がある会社にお勤めの方は、企業型DCのみの場合は月20,000円、それ以外は月12,000円がiDeCoの掛金として拠出ができます。また2024年12月以降はDC、DBといった企業年金と併せて合計55,000円、かつiDeCoは20,000円を上限として拠出できるようになります。

支出の配分に注意する

なにかと支出がかさむ40代ですが、だからこそ何にお金を使うのかを精査したいところです。人生経験を積んできたからこそ、ご自身の人生で大切なものはなんなのかもお分かりかと思います。

周りに振り回されず、お金に振り回されず、しっかりとした資産形成に取り組む参考にしていただければ幸いです。

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