「心のよりどころになってほしい」ヤングケアラーの実体験から生まれた“毎日こども食堂”【SDGs】

地域の子どもたちにあたたかい食事やだんらんを提供する「子ども食堂」。全国的にその取り組みが広がる一方で、利用できる日が決まっていて、本当に困っている子どもが利用したい日に、利用できないといった課題も浮かんできました。

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この課題を解決に導くかもしれないアイディアを考えたのは高校生。実際に2人の妹の面倒を見る「ヤングケアラー」でした。

静岡県伊東市の商店街にある居酒屋です。店のレジに掲げられているのは、子どもたちがこの店で食事ができるように寄付を募る張り紙です。

提案したのは地元の高校生たち。伊豆伊東高校では、課題研究として地域を活性化させる様々なビジネスプランを提案しています。

この3人の生徒が提案したのは、食事に困っている子どもが飲食店で無料で食事の提供を受けられるサービスです。

<伊豆伊東高校 平松美紅さん>
「子ども食堂の毎日版を計画していて、やっぱり従来のこども食堂は月に一回とか日時が決まっていて、利用したいときにできないということがあったので、それを毎日版にすれば、いつでもどこでも気軽に利用できるのではないかなと思いました」

飲食店の利用客に一口100円で寄付を募り、5口たまると子どもたちが1回分、食事ができる、といった仕組みです。店が開いている日であれば、子どもたちはいつでも食事がとれます。

発案者のひとり、平松美紅さん。平松さんも2人の幼い妹の面倒を見るいわゆる「ヤングケアラー」で、その実体験からこの仕組みを思いつきました。

<伊豆伊東高校 平松美紅さん>
「両親が共働きで、食事の面倒が大変だったことから、何か手助けができないかなと思ってこのプランを考えました」

この日は、考えたプランを地元の居酒屋に持ち込みました。

<伊豆伊東高校 平松美紅さん>
「一口100円から買うことができて、子どもたちに食事が提供できますということで」

<笑あん 安藤健雄店長>
「1品サービスとか考えていきましょう。自分が子どもの時に優しくしてもらったことって、感謝している。それを下の子たちにしてあげたいなって」

<地元の農家 小川淳一郎さん>
「いいよ、どれ取っても。好きなの取りな。なるべくでかいの取りな」

高校生の考えたプランを聞いて、野菜を提供してくれる農家も現れました。

<伊豆伊東高校 平松美紅さん>
「すごくうれしいです。地域一体で協力していただけることはすごくうれしいです。実際できるのかすごく不安だったけど、だんだん形になってきて子どもたちの笑顔が見えるんだなと思うとわくわくします」

<地元の農家 小川淳一郎さん>
「子ども食堂だって聞いたもんで、地元で作ったもので、地元の生徒が地元の子どもに提供するっていいじゃないですか」

打ち合わせから3週間。

<笑あん 安藤健雄さん>
「39人分ですね」

寄付はすでに200口近く集まり、約40人分の食事が提供できる状態になっていました。

<笑あん 安藤健雄さん>
「子どもが好きなカレーとかを出したいな」

「ヤングケアラー」の苦労を知る高校生の“思い”が形になりつつあります。

<伊豆伊東高校 平松美紅さん>
「心のよりどころになってほしいなって思います。自分の食事に困ってる子たちも、それ以外の悩みとかがあると思うので、そこにきた子どもたち同士が、例えば話したりとか、例えば高校生がいたら、その高校生が何かアドバイスとかなんか話せる場所があればいいのかなって」

協力した居酒屋では、8月16日にひとまず10人を対象に食事を提供する予定です。

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