戦争の記憶どう継承するか 和歌山県の戦没者遺族会、青年部創設も会員数は減少

地元の慰霊碑を参拝する県遺族連合会青年部副部長の橘智史さん(和歌山県田辺市新庄町で)

 今年は戦後78年。戦没者の遺児も高齢化が進み、遺族会の活動が岐路に立っている。和歌山県遺族連合会は青年部を創設し、世代交代を図ろうとしているが、会員数は広がりを欠く。二度と戦没者を出さないために、戦争の記憶をどう継承するか。模索が続いている。

 田辺市遺族連合会の2022年度の会員数は966人で、10年間で約35%減少した。西牟婁郡は538人で約45%減少している。

 県遺族連合会は17年に青年部を設立した。戦没者の孫やひ孫に戦争の悲惨さや平和の大切さを次代に伝える役割を担ってもらうのが狙いだが、スムーズに進んでいない。

 創設時から県青年部の副部長を務める田辺市新庄町の橘智史さん(53)は祖父がガダルカナル島の戦いで戦死し、遺骨も帰ってきていない。ただ「祖母も生前、戦争について多くは語ってくれなかった。リアルタイムで体験している人と僕たちでは伝えられるものが違う」と話す。

 青年部は慰霊祭の設営を準備し、式典に出席するが「その他の活動は、どうしていけばいいか。多忙な現役世代なので、そうそう集まれるわけではない。全てを受け継ぐのは難しい」と打ち明ける。

 橘さんは今年4月に田辺市遺族連合会の会長にも就任した。「終戦100年までは続けてほしいと言われている。それにはさらに下の世代を巻き込むことが必要。歴史認識についてはそれぞれ考え方がある。ただ、実際に戦争があり、身近な人が亡くなっている。その事実はしっかり伝えていきたい」と話している。

遺族連合会 会員数推移

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