パズドラにウマ娘…ゲームのヒットで株価はどう動いた?よゐこ有野「うぉ~、すごい!」

お笑い芸人・よゐこの有野晋哉さんが、毎月さまざまな専門家をゲストに迎えて、お金の知識を身に付けていく「お金の知りたいを解決!お金の学園〜学級委員・よゐこ有野晋哉〜」。2023年8月は個人投資家でCFPの藤川里絵先生に、株式投資について伺いました。

今回は、「株価はどうやって決まるか」について。なぜ株価は上下するのでしょうか?


有野晋哉(以下、有野):これだけ暑いと、外に出る気にならんなぁ。でも、たまには運動もせぇへんとあかんし、スポーツジムに通ってるけど、エアコン効いた部屋で汗だくで走ってる人見てたら、何だかなぁ……って思うから、走らずにサウナ入って帰ってしまう。でも、運動せなアカンなぁ……。

藤川里絵(以下、藤川):有野さん、私は暑くてもジョギングはするようにしていますよ! ……なるべく(笑)

有野:先生、すごいですね! そうそう、ジムといえば「コナミスポーツ」っていうフィットネスジムがありますけど、あれってゲーム会社のコナミと同じ会社ですか?

藤川:同じグループ会社ですね。もう20年以上前になると思いますが、コナミはスポーツクラブの会社を買収して、フィットネス事業に参入しました。特に上場している企業は成長が求められますし、収益力を伸ばすために、さまざまな事業に手を伸ばす会社が少なくないんです。有名なところでいうと、ソニーは以前、家電などのエレクトロニクスが主力でした。しかし、現在は金融、ゲーム機、映画などいろいろな事業を展開しています。

有野:昔は音楽プレイヤーと言えばソニーって感じやったけど、ミュージシャンも所属するようになったり、世界的にはソニー=プレステのイメージやなぁ。僕個人的には変な芸人も所属してる印象。

短期的な“流行り廃り”で株価が上下する

藤川:今回は「株価が上がったり下がったりする理由」についてお話したいのですが、結論から言うと、やはり最大のポイントは業績なんです。好業績が続けば株価は上がるし、反対に業績の低迷が続けば、株価は下がります。小さい会社だと、1つの商品やサービスのヒットで業績は大きく伸びますが、ソニーみたいな大企業になると、ひとつの商品が多少ヒットしたくらいでは、株価にはほとんど影響しないかもしれません。

有野:なるほど。小さな会社やったら一個大ヒットしたら、株価爆上がりやけど、大きな企業になると一個大ヒット出しても、株価が上がるとは限らないんですね。

藤川:有野さんはゲームがお好きと聞きましたので、1つの例をお見せしましょう。これは、ガンホー・オンライン・エンターテイメントの株価チャートです。2013年前後、すごい上がってますよね。

有野:うぉ~、すごい! これでもか、ってくらい上がってますね。

藤川:なぜこんなに上がったのかというと、有野さんはスマホゲームのパズドラってご存じですよね?

有野:知ってますよ、めっちゃ流行りましたよね。テレビCMでよく見ます。CMに人気者が使われてたり、色んなキャラクターとコラボしてるから儲けてるんやろうなー、って感じます。そもそも、何屋さんやったんですか?

藤川:ガンホーはパズドラがヒットする前は、パソコン向けゲームのメーカーでしたが、さほど大きい会社ではなく、業績も低迷していました。ところが、『パズル&ドラゴンズ』のメガヒットで、一瞬にして高収益企業に大変身! 株価も暴騰して、50倍以上になったんです。

有野:えぇ、50倍!? 1万円買っておけば50万円になったってことか。

藤川:買うタイミングによっては、100倍超になっています。ただ、当時のガンホーの最低売買価格は10万円台後半だったので、実際には1万円分を買うということはできませんでしたが、発売後しばらくは株価は反応していなかったので、早めにパズドラの面白さに気付いて買っていたら、爆益だったのは間違いありませんね。

有野:1銘柄が100倍超えることもあるんですね。

藤川:ここまで短期間に100倍超になるというのはさすがにレアケースです。ところが、その後の株価を見てください。

有野:あ、めっちゃ下がってる! ヤバいですね……。

藤川:ガンホーは、パズドラのメガヒットで高収益企業に生まれ変わったんですが、パズドラに続くヒット作をなかなか生み出せず、業績も株価も尻すぼみになってしまいました。会社の規模が小さいと、1つの商品やサービスのヒットが株価にも大きなインパクトを与えますが、業績の伸びが止まり、その後も悪化が続くと株価も下がってしまうということです。

有野:なるほど! 会社は1回上がった業績はそれを維持しないとアカンねや。それも右肩上がりにずっと稼ぎ続けんとあかんわけか、社長も大変やなぁ……。

藤川:ガンホーはさすがに極端な例ですが、株価は、その時その時に話題となっているテーマ、または何らかの材料によって、「短期的に」買いが集まることで上昇します。

有野:なるほどなぁ、株価にも“流行り廃り”があるわけですね。そうならへんように、コラボしたり、宣伝して忘れられへんようにしていくわけだ。芸人も1つのギャグでブレイクして、急にメディアにめっちゃ呼ばれるようになっても、ギャグだけじゃなく平場のトークやレポートでも結果出さないと、すぐ飽きられて呼ばれなくなっていくもんなぁ。

藤川:ヒット商品以外にも、たとえばオリンピックだったり、野球の大谷選手が紹介したモノだったり。流行りのテーマは「〇〇関連」と呼ばれ、一時的に買いが集まり、株価上昇の理由になります。さらに、本来はそのテーマとほとんど関係がない銘柄でも、「〇〇関連」と紐付けられて買われるケースも珍しくありません。

有野:関連ってあった! 昔、「チーズはどこへ消えた?」って絵本が流行った時に、売り切れが多くて、色んな出版社がすぐによく似た絵本出して、「それ違うで」って、チーズ関連の本がたくさん売られてた。「バターはどこへ溶けた?」とかあったなー。「〇〇関連」って、まがい物的な事ですか?

藤川:ちょっと違いますね(笑) 例えば、東京オリンピック開催が決まった時は、多くのメディアが大々的に取り上げましたよね。株式市場では、「東京オリンピック関連」として、スポーツ用品のメーカーや、オリンピックの有力スポンサーになりそうな会社が買われました。

有野:全然違った。そうか、オリンピックが開かれれば、いろんなスポーツ全体が盛り上がるし、スポーツ用品も売れるから、ってことか。あと、「大画面で綺麗に見たい」って、テレビも売れましたね。関連で儲けそうな所全部が買われるのか。見分けが難しそう、「オリンピック関連」に引っかからないようにしないとですね。

藤川:引っかからないようにという意味では、この時に、オリンピックという名前のスーパーも買われたんです(笑)

有野:え~っ! 名前がかぶってるからかな、それは分かるでしょ?

藤川:そうですね(笑) 株式市場では、1つのテーマでさまざまな銘柄がテーマに関連付けられて、買われることがあります。その「〇〇関連」を探すのが楽しかったりするんですよ。ただ、そうした株価の上昇は、短期的にとどまるケースが大半。一時的に買われても、徐々に下がる可能性が高いですね。

有野:会社としては、そんなつもりなくっても、関連に入って急に株価上がって、それはそれで社長は怖かったやろうなぁ。それ考えたら切ないなぁ……。でも4年に1回爆上がりはいいですね。

株価は実態を先読みして動く傾向あり

藤川:ほかに、短期的に株価が上がる例としては、「サプライズ決算」や「増配や優待拡充」などが挙げられます。

有野:サプライズ決算ってなんですか? さっきの「関連」もので急に上がってビックリしちゃったから、決算やっちゃえとか?

藤川:そんなに期待されていなかったのに、フタを開けてみればいい決算でした、というケースがサプライズ決算です。ちなみに、「いいサプライズ」もあれば、「悪いサプライズ」もあります。好決算が期待されていたのに、実はよくなかったケースですね。

有野:ゲームでも、「満を持しての続編が出た!」って、すごく期待されてたのに、発売されたらそこまでおもろない、ってことがたまにありますよ。

藤川:株式相場も、まさにそれと同じことがよく起きます。多くの投資家が「めちゃくちゃいい決算になる」と期待していたのに、「悪くはないけど、期待ほどじゃないよね」という内容だと、たとえ増収増益でも株価が下がることがあるんです。期待外れというやつですね。それに気付けないと、「増収増益なのに、なんで株価が下がるの?」ってなっちゃうと思います。

有野:でも、投資家が期待してるかなんて、どうやってわかるんですか? 株価の動きがわかるみたいに、企業向けに投資家の期待値を見るサイトがあるんですかね。

藤川:投資家の期待を予測するのは簡単ではありませんね。なので、短期的な株価の予測って、すごく難しいんです。

有野:じゃあ、株なんて買えないじゃないですか。損するかもしれへんわけだし。

藤川:実は、ここまでのお話しは、すべて「短期的な」値動きについてなんです。

有野:長期では違うってことですか?

藤川:では、長期的に株価が上下する理由は、いったいなんだと思いますか?

有野:業績でしょ。

藤川:正解です! 株価は、短期的にはさまざまな要素で大きく上がったり下がったりしますが、長期的に見れば、業績に収束すると言われています。ガンホーの業績は、2014年12月期にピークを迎え、その後はパズドラに続くヒット商品を生み出せず、業績も縮小しています。だから、株価もズルズルと下がり続けました。もし、パズドラのほかにヒットゲームを開発できていれば、株価がここまで下がることはなかったかもしれません。

有野:一発ギャグでドーンと有名になった芸人とおんなじ感じですね。その後もう一発、もう一発……って、6発屋芸人にまでなるやつおらんかな。同業者としては、あんまり一発屋って単語は使いたくないねんけど。

藤川:もう1つ面白い点を挙げると、ガンホーの業績のピークは2014年12月期ですよね。その決算が発表されるのは、だいたい翌年の2月頃なんですが、決算の発表を待たずに、株価は2013年の半ば頃から急落しています。

有野:ほんまや。なんかボロが出始めたってことですか?

藤川:実は、株価はだいたい実態よりも半年から1年程度、先読みして動くケースが多いんです。業績の発表って年に4回、つまり3ヵ月に一度行われるんですけど、ガンホーの場合はパズドラ人気のピークが過ぎているのに、新しいヒットゲームを生み出せていなかったので、業績が最盛期を迎えるよりも前に、株価が下げに転じました。

有野:でも、業績は悪いどころか、上がってるんですよね? なんで下がるんやろ。

藤川:株価って、ずっと上げ続けることも、ずっと下げ続けることもないんです。長期間上がっていたとしても、いつかは下がる。ガンホーのケースでいえば、ずっと株価が上がり続けていたので、「そろそろパズドラに飽きる人が出そう」とか、「そろそろ下がるかもしれないから、株価が高いうちに売っておこう」と考える人が、徐々に増え始めるんです。

有野:なるほど~。どこかで下がり始めるやろうから、「今のうちに売っとけ!」ってなるわけか。

短期的には話題性、中長期的には業績がモノを言う

藤川:今度は、サイバーエージェントの例を見てみましょう。少し前に、グループ会社のCygamesが出した『ウマ娘 プリティーダービー』が話題になりましたよね。

有野:流行った! ずっとやってる後輩がいました。「ウマ娘より、自分も育てや!」って見てました。

藤川:サイバーエージェントの場合、株価はガンホーほど上がってはいませんが、それでも、ウマ娘のヒットによって800円台から2,400円程度まで上がりました。でも、ガンホーほど上がらなかった理由は何だと思いますか?

有野:えぇ~、わからへん(笑) アニメやイベントやらすごい手広くやってるけど、投資家が落馬した。

藤川:本当の競馬じゃないんですから(笑) ガンホーはもともと会社の規模が小さく、パズドラ一本だけで売り上げと利益が爆発的に伸びたのに対して、サイバーエージェントはネット広告だったり、ABEMAだったり、他にも多くの事業を展開していて、ウマ娘の発売以前でも売上高の規模が5,000億円近くありました。確かに、ウマ娘のヒットで売り上げや利益は伸びましたが、ガンホーほどのインパクトはありませんでしたね。ABEMAなど他事業への投資がかさんだこともあって、業績が落ち込むのも早かったです。その「持続性のなさ」も株価が下げに転じた理由の1つでしょう。

有野:なるほど! 初めのソニーの話が効いてくるんだ。小さな会社ならヒット1個で爆上がりやけど、大きな企業やと、ヒット1個ではさほど上がらない。持続性のなさで言うと、ABEMAは、夜中の番組をごっそり削ったりしてましたよね。あ、急に毒出ちゃった。

藤川:会社としては、ABEMA事業を第二の収益柱に育てたいイメージがありますし、あれこれ試そうとしている最中なんでしょう。いずれにしても、ABEMA事業などへの先行投資によって利益は減っています。もっとも、先行投資が花開いて、復活する可能性もあるでしょう。いまサイバーエージェントの株を買っている人は、その復活に期待しているのかも。「将来への期待感」は、株価の上昇に大きく関係します。

有野:なるほど、投資家の心得として、期待を持ち続けられるかがカギになるんですね。

藤川:株価は、短期的には話題性で上下しますが、上昇を維持できるかどうかについては、業績が拡大するかしないかにかかってきます。サイバーエージェントも、ABEMA事業が将来的に大きな利益を生むことがわかれば、株価が上がる理由になるでしょう。

有野:ABEMA事業で成功して欲しいけど、先行投資をどこまで我慢出来るかの体力にもよるもんなぁ。でも、興味ある分野だったり、しっかり分析できないと、その理由を知ることはできなそうですね。

藤川:そういえば、ゲーム会社のカプコンの株価が上がり続けているんですけど、私はゲームを全然やらないのでわからないのですが、有野さんはいったい何が起きているかご存じだったりしますか?

有野:カプコンは、バイオハザードとモンスターハンター、ストリートファイターが3つの柱になっていて、シリーズもたくさん出ているんですけど、新しく出た続編が調子いいみたいですね。ストリートファイターは、1作目が出たのは30年以上前になる作品で、ずーっと愛されてて新作を待たれてるゲーム。最近はeスポーツ分野でも注目されていて、定期的にプロゲーマーの大会が開かれるレベルです。今年は新作『ストリートファイター6』が発売されたんですけど、8月からは大会が始まって、優勝賞金は1億円らしいですよ。

藤川:やはりお詳しいですね! それにしても……1億円ってすごい、私もやってみようかしら(笑)

有野:先生、いきなり大会は厳しいですよ〜。まず、ゲームに慣れるところから始めたほうがいいかもしれないですね。ゲームに興味が出てきたなら、ぜひ「ゲームセンターCX」も観てください(笑)

次回(8月15日配信予定)は「投資スタイル」について聞いていきます。

有野晋哉
1972年2月25日生まれ。大阪府出身。テレビやラジオ、CM、雑誌の連載などマルチに活躍。コンビで公式YouTube「よゐこチャンネル」も開設しており、幅広い世代から支持を得ている。自身が50歳を迎えた2022年に、お金にまつわる知識の大切さに目覚め、日々勉強中。

藤川里絵
2010年より株式投資をはじめ、主に四季報を使った投資方法で、5年で自己資金を10倍に増やす。負けない投資がモットー。普通の人が趣味として楽しめる株式投資を、日本中の(とくに数字オンチの)人に広めるため、講演活動、パーソナルトレーニング、オンラインサロンと多岐に活動中。おもな著者に『月収15万円からの株入門 数字音痴のわたしが5年で資産を10倍にした方法』(扶桑社)、『株は5勝7敗で十分儲かる!』(ビジネス社)、『株の達人が教える世界一楽しい会社四季報の読み方』(SBクリエイティブ)

ライター:新井奈央

※本記事は投資助言や個別の銘柄の売買を推奨するものではありません。投資にあたっての最終決定はご自身の判断でお願いします。

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